おねえさまは毎日タイクツ

□1
1ページ/2ページ


ここはヒーローを目指す者の憧れ雄英高校。本日は体育祭。それも終わり生徒達はゾロゾロとそれぞれのクラスへと戻って行く。そこで俺は女神を見つけてしまった。完全に一目惚れだ。綺麗すぎる。

「おい、峰田。見ろ、ヤバくね?すげぇ美人見つけた。」
「ヤベー!オイラちょっとお近付きに…」
「ちょっ、お前…!」

俺が制止するより早く、すぐさま走って行ってしまった峰田。行動力ハンパねぇ、と思いつつ自分が出遅れたことを後悔する。あんな美人とアイツがどうにかなるだなんて思わねぇけど、もし万が一にもなにかがあったら悔しいなんてもんじゃない。追うべきか悩んでいると意外にも峰田は早々に帰って来た。

「ヒーロー科3年A組の??さんだってよ!」
「おまっ、すげぇな。」

なにをどうしたのか知らないが、彼女の名前を知れたのはデカい。
高校入ったら彼女作るぞー!とか意気込んでたけど、もうあの人がいい!絶対あの人と付き合いてぇ!
「まっ、どっちにしろ俺らには無理だって。
ありゃ轟レベルじゃねぇと。」
「やっぱお前もそう思う?」

「近くで見たらさらにヤバかったぞ。」と峰田が付け加える。
ワンチャンどうにかなんねぇかなー。押しに弱かったら最高なんだけどなー。あー、でも彼氏いるかなー。
考えてもしかたねぇ!当たって砕けろ、何回砕けても何回でも当たりにいってやる!

*****

毎日毎日どうしてこうも退屈なんだろう。体育祭も終わってしまって数日、なんにも楽しいことがない。1年生の頃は体育祭の活躍に応じて職場体験が〜とか少々楽しくもあったけど。もう3年目ともなると大体インターン先も決まってるし大した変わり映えのしない日々だ。

「ちょっと?ー!」

名前を呼ばれて頬杖を止める。呼ばれた方を振り返ると、クラスメイトと…誰?

「アンタに用事だってー!」

ニヤニヤとクラスメイトは楽しそうに笑う。心当たりは…ないな。そもそも私はあんなチャラい知り合いは居ないはず。訳もわからず呼ばれた方に行くと、やっぱり知らない男子が立っていた。

『はい?』
「あ、あの!ちょっと来てもらっていいっすか?」
『はぁ。』

どう見てもこの子下級生だよな、まだ初々しい感じ。1年生かな?1年生といえばなんかこの間敵の襲撃に遭ってたクラスあったよな…そんなどうでもいいことを考えながら、私を呼び出した男子について行く。これはもしかして相当楽しい展開が来るんじゃないか?なんて期待を少し抱いていると、その子は屋上へ続く階段の所でピタリと足を止めた。ここの扉は閉鎖されてるから、普段からあまり人はいない。くるりと振り返ったその子が大きく深呼吸をする。

「あの!体育祭の時に一目惚れしました!よかったら付き合ってください!」
『うん、いーよ。』

いいじゃん、面白そう。退屈な毎日に終止符は打てるだろうか。

「やっぱ無理っすよね、でも俺諦めませんから!」
『うん、だからいいよって。付き合う付き合う。』

しばし沈黙、目をパチパチさせる金髪チャラ男。いや、告ってきた方がその反応はおかしくない?なんだこの子、おもろいな。

「え、えっ⁉いいんすか!」
『うん、で、きみ誰?』
「あ!1年A組の上鳴電気って言います!」

あ、話題のA組だ。これは話題に事欠かなそう。

『電気くんね。??です。
よろしくお願いします。』
「こちらこそ、よろしくお願いします。」

今更お互いに自己紹介してペコリと頭を下げ合う。なんだこれ、まあ退屈しのぎには丁度いいだろう。見た目も結構かっこいいし、ハイテンションで「よっしゃー!」なんてガッツポーズして、なんか子犬みたいでかわいいし。

「連絡先聞いてもいいっすか⁉」
『あぁ、うん。』

ポケットからスマホを取り出してお互いの連絡先を交換する。あぁ、なんか青春っぽい。電気くんはなんだかキラキラ輝いて見える。元気だなー、若いなー。

「あざーっす!
そだ、この後って予定ありますか?
飯行きません?」
『そだね、行こっか。』
「よっしゃー!じゃあ俺カバン取ってきます!
校門待ち合わせで!」

私の返事を聞くより早く走って行ってしまった。私もカバン取りに行かなきゃな。
教室に戻ると待ってましたと言わんばかりのクラスメイトの顔。「なんの話だった?」とかわかってるくせに聞いてくる。『彼氏できたわ。』とだけ短く返し、面倒くさくなる前に教室から逃げた。





次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ