元アイドルとの生活

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家に入る前にそうだ、とチョロ松が止まる。

「ごめん。僕、女の子と一緒に住む理由が思いつかなくて…結婚を前提になんて言っちゃって。あと、?ちゃんに頼られてちょっと舞い上がっちゃってたのもあったし…」

なるほど、それ故のあの発言か。正直ちょっと引いたわ。笑ったけど。

「両親にあぁ言っちゃった手前、今更嘘って言うのも…」
『わかったよ。ご両親の前ではそれっぽい態度しとく。猫被るの得意だし。』
「ありがとう!?ちゃんが出て行くって決めた時には、僕から上手く言うようにするから!」

まあ、その時になったら『一緒に住んでみたら嫌なところが目に付いちゃって…』とかなんとか言えばいいだろ。そんな風に考えて頷いておいた。

「ただいまー。」

チョロ松の声に奥の方から《おかえりー》と反応がある。そのままチョロ松に連れられて反応があった部屋に入り腰を下ろすと、長男赤パーカーがニヤニヤとしながら私を見た。

「へー、結局そうすることにしたんだー。」

あれだけ出て行こうとしてた私が、まんまと三男に丸め込まれて帰ってきたことが心底面白いらしいこの男。ほらな、やっぱり性格悪いんだ。さっきの兄弟想いっぽい一面も私の勘違いだ。そう思い直すことができた。

「なになに、なんの話?」
『別になんにもない。』
「そうだ、?ちゃんもう僕達の見分けつくようになった?さっき色で呼んでた気がするけど…」

苦笑いしながらチョロ松に言われた。そうなんだよ、さっきはここに長居するつもりもなかったし、なにより予想外のことが起こりすぎてちゃんと聞いてなかったんだよ。

『あー、もっかい名前教えて。』
「俺、松野家長男おそ松!」
「次男、カラ松だ。よろしくbaby.」
「四男、一松。」
「五男、十四松ー!!」
「六男のトド松です、よろしくね。」
「で、僕が三男のチョロ松。さすがに僕のことは見分けつく、よね?」
『あー、うん。多分ダイジョブ。』

「ほんとにー?」なんて笑うチョロ松。さすがにチョロ松はわかる、つもりだ。あとは、まあなんとなく。長男アピールがすげぇのがおそ松。勘違いカッコつけボーイがカラ松。気怠そうなのが一松。元気なのが十四松で、あざといのがトッティ。おっけー、完璧だ。

「まあ最初はややこしいと思うけど、すぐに慣れるよ。それに、間違えられるのは慣れてるから、間違えても気にしなくていいからね。」
「その代わり間違えたら一回乳揉ませろよな。」
『もうお前だけは絶対間違えねーよ、おそ松。』

そんな感じで六つ子の話を聞いてると、襖がガッと開いてお母さん登場。六つ子達の前ではまあまあ崩れていた姿勢を少し正した。

「ニート達、早くお風呂行ってきなさい!」
《はーい。》

さすがニート。親の言うこと素直に聞くんだな。というかお風呂、全員で?え、どういうこと?いそいそと支度を始める彼らをキョロキョロと見回していると、お母さんから「はい。」と渡されたお風呂セット。え、私も一緒に入れってこと?

『え、チョロ松。これ、一緒に入れってこと?』
「まさか!銭湯行くんだよ!そんな、?ちゃんと一緒にお風呂だなんて!」

あぁ、銭湯か。真っ赤になって首をぶんぶん振る感じがなんとも童貞らしい。

「まぁお前がお兄様のお背中を流したいって言うなら一緒に入ってやってもいいぜ。」
『は?ばかじゃない?』
「おまっ、ばかって酷くね⁉言っとくけどな、お前が三男の嫁ってことは俺の方がお兄ちゃんなんだからな!」
『嫁じゃねーわ。早く行こ、チョロ松。』
「あ、うん。」

まだ後ろでなにか文句を言っている自称お兄ちゃんを無視して、私達は銭湯へ向かった。




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