元アイドルとの生活

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『だからさぁ!なんか文句あんの?あんならさっさと言ってくんない?』
「?ちゃん、飲み過ぎだって。」

うるせぇ知るか。誰のせいだと思ってんだ、お前だよチョロ松!だいたいなにが不満であんな顔した?バイトしたらダメなのか?いちいち言わなきゃダメなのか?お前は私のおかんか?おかんに報告必須なのか?

『おかんぶってんじゃねぇよ、ばーかばーか!』
「ごめん、言ってる意味が全然わかんない!」
『うるせぇ!お前も飲めクソ童貞!』
「おっきい声で言わないで!」

喚くチョロ松にグラスを押し付け酒を流し込む。飲め飲め、私ばっかりこんなの不公平だ。

「ぷはーっ、ちょっと?ちゃん、マジでやめようよこんな飲み方…ね?」
『ね?じゃねーよ、大人ぶんな!なんであんな顔したんだ!不満があるなら言え!』

チョロ松にグイグイとグラスを押し付ける。なんだかんだで嫌がりながらも飲んでんじゃねーか、この童貞が!
何杯か飲ませたところで急にダンッと机を叩き、チョロ松が立ち上がった。え、なに?キレちゃった?

「じゃあ言わしてもらうけどさ!」

大きな声を張り上げるチョロ松。普段見たことのないその態度に、こちらの酔いがスーッと醒める。

「確かにさ、仕事して自立するまでって言った、言ったよ⁉でもさ、俺は?ちゃんが好きなんだ!少しでも長くうちに住んでて欲しいし、少しでも一緒にいたいんだ!そのためには?ちゃんがバイトして自立しちゃ困るんだよ!
あぁクズさ!最低な考えだよわかってる!引いたでしょ⁉でもね、俺はそう思ってるし、もうすぐ?ちゃんが出て行っちゃうって考えたら辛いに決まってんだろ!バーカ!天使!どこまで可愛いんだチクショウ!」

そう息継ぎもしないで言い切った。そして居酒屋で公開告白した本人はガタンとそのまま椅子に崩れ落ちて寝た。勘弁してくれどうすんだこの空気。童貞にしちゃ頑張った、頑張って告白できたね偉いね。なんて現実逃避してみるが、周りの視線がやはり痛い。
眠ったチョロ松を無理矢理起こし、なんとか立ち上がらせると視線を受けながら店を出た。
大勢の前であんなこと言われて、恥ずかしいやらみっともないやら…でも、不思議と嫌な気持ちはしない。
仕方ない、頑張った童貞にご褒美だ。今日は同じ布団で寝てやろう、どうせ手も出してこないしね。
そんなことを考えながら、ぐでんぐでんの彼を引きずり私は帰路に着いた。




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