元アイドルとの生活
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「…はぁ〜。」
チョロ松のため息はこれで何回目だ。ここ最近うわの空で心ここにあらずな状態が続いている。
「ちょっと、?ちゃん。
アレ、なんとかなんないの?」
トド松がコソッと私に言ってくるが、私の知ったこっちゃない。まぁ、理由はわかってる。けど、その理由がまたムカつく。
いや、前々から知ってたよ。就活するフリして橋本にゃーのライブとか行ってたの。本人は隠してるつもりみたいだったけどバレバレだったし。別にどうでもいいけど。お前が誰の追っかけしてようが、私に関係ないし?それをなんか私に気を遣って隠してますよっていう感じがそもそもムカつく。押入れの奥の方にグッズ隠してんのも腹立つ。なに?私の何になったつもりなの?彼氏気取りか?で、これだよ。
【橋本にゃー 結婚!】
隠してるつもりならそこも隠せよ!ショック受けて全面に出してんじゃねーよ!ムカつくムカつくムカつく!
「…うっ、にゃーちゃん…ぐすっ。」
うーわ、ついに泣き出したよ。なんだよ腹立つな!
『あー!もう!うっざい!
金持ちに無職童貞が勝てるわけないんだからいい加減諦めたら⁉』
「ち、違うよ…別ににゃーちゃんが結婚してアイドル辞めちゃうことなんて、全然気にして…ないから…」
超絶気にしてるじゃねーかよぉ!なに露骨に目逸らしてんだよ!むっかつくなぁ!なに⁉まだそのスタンスで行けると思ってんの⁉バカじゃないの⁉
『お前さぁ!無職童貞のクセにこんなクソ可愛い女子と同じ部屋にいてさぁ!
なんなのマジ、ムカつくんだけど!』
「うわー、自分でクソ可愛いとか言っちゃってるよ。」
「そうだぞブラザー、レディーの前で失礼だ。」
「ていうかそれって何、もしかして妬いてんの?」
「えー!?ちゃんヤキモチ妬いてんのー⁉
かっわいいねー!」
「そういうとこあるんだねー、いがーい。」
なんでそうなるんだよチクショー!ヤキモチとかじゃないから!そうじゃないけど!普段あれだけ可愛い可愛いって私にデレデレしながらさ、他のアイドルにうつつ抜かしてさ!結局こいつが好きなのは私自身じゃなくてアイドルという幻想なんだよ!アイドルじゃなくなった私は用済みなんだよ!
「うそ、?ちゃんヤキモチ妬いてくれてるの?」
『ちーがーうーわー!ただ目の前でいつまでもグズグズされてると不快なだけ!』
「そっかー、ヤキモチかー。
でも心配しないでね、大本命は?ちゃんだからね。
なんていうかさ、にゃーちゃんは追っかけ歴が長いからなんか感慨深くて…」
なんか語りモード入ったんですけど!他の5人はニタニタと笑いながらこっちを見てくるし。すっごい不愉快。もういい、少し早いけどバイトに行こう。悪かったな、もうアイドルじゃなくて。
「あ、待って!」
出て行こうとする私の手をチョロ松が掴む。なんだ、その面倒くさい語りをまだ聞かせる気か。
「でもね、安心して。
大好きなのも付き合いたいのも結婚したいのも?ちゃんだけだから!」
『は?調子乗んな童貞!』
「バイト行くんだよね?送って行くよ!」
すっかり立ち直って嬉しそうにバイト先までついてくるコイツもムカつくし、後ろでヒューヒューとか言ってたアイツ等にも非常にムカついた1日だった。