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□幸せのその先は《第2章》
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それからというもの、名無しさんは白雪のメイドとして忙しい日々を過ごすことになった。

最初はメイド服の採寸から始まった。膝丈とロングスカートと選べたが、名無しさんはロングスカートを選んだ。

次に城内の把握。メイドとして、抜け道や裏口なども精通していなくてはならない。ゼンから城の地図をもらい、頭に叩き込む。地図をもらったときゼンが簡単に説明してくれたのだが、彼は地図に載っていない道まで知っていて、名無しさんが不思議そうにしていると、「よく抜け出すからな、ゼンは」とミツヒデが笑って理由を教えてくれた。

そしてメイド長の元でメイドの仕事を覚えながら、白雪の世話をする。
白雪は薬剤師としての仕事も並行しており、王子妃としての仕事と薬剤師としての仕事で毎日忙しくしていた。
名無しさんは身支度、食事の配膳に加え、執務の手伝い、謁見の取り次ぎなど、白雪の仕事全般の補佐も行うことになった。



仕事を覚えるのとこなすので精一杯で、矢のように日が過ぎた。


1ヶ月が経ち、名無しさんが城と自分の主人たちに慣れ始めた頃。

「名無しさんさん、オビ最近見かけた?」

白雪の髪をとかしていたところ、尋ねられた。
「私は最初に白雪様たちにお会いしてから、オビ様とはお会いしていません。何かお仕事かと思っていたのですが、違うのですか?」

そう答えると、うーん、と白雪が考え込む。
「遠くで仕事とかじゃないはずなんだよね。城内にはいるはず…。いつも、どんなに忙しくても会いにきてくれた。仕事はきちんとしてるし、ゼンのところにも報告に顔出してる。でも最近、話してないなと思って…何かあったのかな。」
白雪は心配そうにしていた。

「そうなんですね。心配ですね、オビ様。何かあったのでしょうか?私も見かけたらお話を伺ってみます。」
「うん。お願いします。」
そう行って、自分の主は薬室へ出かけていった。



オビはいつも出かけている訳ではなかったのか。
ずっと見かけなかった名無しさんは不思議に思う。
白雪付きの騎士が、なぜ白雪のところに顔を出さないのだろうか?ゼン配下とはいえ。

「…何か理由があるんでしょうね。」
そう呟くと、名無しさんはオビを探すため部屋を出た。
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