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□幸せのその先は《第4章》
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オビとの一日を過ごしてから矢のように時間が過ぎ、ついにタンバルンへの出発の日となった。
出発は、城の門までゼン達が見送りに来てくれた。
「忘れ物はないか?」
「大丈夫だよ。今回は名無しさんさんもいるし。いってきます。ゼンも体気を付けてね。」
ゼンと白雪は名残惜しそうに別れの挨拶をしていた。
「名無しさん。道中は物騒なところがあるからな。白雪のこと、よろしく頼むぞ。」
「かしこまりました。行って参ります。」
名無しさんは、ぺこ、とゼンにお辞儀した。
「あれ〜?それは俺に言うセリフなんじゃないですか主?女の子に言うセリフじゃないでしょ」
オビがゼンに不思議そうに聞いた。
「なんだ、お前知らないのか?」
今度はゼンが不思議そうに言った。
「何がですか主」
「あのなぁ、名無しさんは…」
ゼンはそこまで言って口をつぐみ、不意に不敵な笑みを浮かべた。
「ま、面白そうだからオビには内緒にしとくか」
「えっ。教えてくれないんですか主。」
「教えない」
「えー。木々嬢は知ってます?ミツヒデさんも?」
「知ってる。」 「知ってるな。むしろ知らないのお前だけじゃないのか。」
えぇっとオビはショックを受けていた。
「オビ、私も知らないよ。これから聞けばいいんじゃないかな。タンバルンまで長いし。」
「お嬢さん…そうだね…なんか軽くショックだ」
オビは名無しさんのことを聞きたがったが、出発のお時間です、という御者の声に促され、名無しさんたちは馬車に乗り込み、タンバルンへ旅立ったのだった。