ガーネットストーリー
□U What's your name?
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「たでーまー」
「お帰りなさい銀さん」
よろずやの扉を開けた私たちを出迎えてくれたのは若い男の子。私に気づいた彼は少し驚いた顔をしてからニッコリと笑った。
「銀さん、その方は?」
「有紗……いや、なんでもねぇ」
「っ……」
なんでだろう。坂田さんの呼んだ名前に心がツキリと痛む。
有紗って、誰?
「? えっと、依頼ですか?」
「おう。記憶喪失なんだと」
「記憶喪失……」
そう繰り返したメガネくん(仮)が私をもう一度見る。自己紹介しようにも名前が思い出せないので、会釈だけしておいた。
「とりあえず、どうぞ上がってください」
「は、はい。お邪魔します」
奥に通されてソファーに座るよう勧められたので遠慮なく腰を下ろす。飾られている『糖分』をボーッと見ていたら、隣の部屋から女の子とやたらでかい犬がでてきた。
「銀ちゃん、お帰りネ。酢昆布買ってきたアルか?」
「いっけね、忘れてた」
「はい、お待たせしました。緑茶でよかったですか?」
「勿論です。ありがとうございます」
差し出された湯呑みを手に取り、口につける。ちょうどいい熱さに感動した。
「おい新八、酢昆布買ってこいヨ」
「無茶言わないでよ神楽ちゃん。今は依頼優先だよ」
「そんなの関係ないアル」
「ちょっと!依頼人の前でなに言ってんの!?」
「依頼人?」
「そこに座ってんだろ」
「ホントだ」
……あれ?私認識されてなかった?