泡沫のイーハトーヴ

□其ノ参 お腹が空いた審神者
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何かが自分に絡み付いている。それを取ろうともがけばもがくほど、体を締め付ける力は強くなった。でも、痛いわけではなく、むしろ気持ちがいい。
……マゾヒストな訳ではない。安心するのだ。まるで、自分を守ってくれているような……。











気がつくと、目の前に暗い天井があった。

「……あれ、私」

どうやら布団に寝かされているようだ。もぞもぞと起き上がると、至近距離で声がした。

「起きたか」
「っ!ど、同田貫様……」
「もう大丈夫そうだな。にっかりが心配していたぞ」
「あああありがとうございます」

大慌てで頭を下げる湊に、同田貫は小さく頷いた。

「礼ならあいつに言いな。あ、でも、あいつにはもう遅いから寝るように言ったから、多分明日になるんじゃねぇか、ここに来るのは」
「そうですか…ありがとうございました」
「じゃ、ゆっくり休めよ」

音もなく立ち上がった同田貫があっという間に部屋を出ていくのをポカンとしたまま見送って、湊はハッとした。

「もう夜中じゃん!?」

あの集まりはどうなったのだろう。呼び出すだけ呼び出しておいて気を失うなんて、私盛大にやらかした。いたたまれない気持ちが膨らんで、彼女はうおぉぉ、と頭を抱える。

そのときだった。







ぐるるる…………







「……お腹すいた」

そういえば、ここに来てから何も食べてない。もう1日半は経過してる。
……政府から食材は届いてたけど既製品はなかったから、自分で調理するしかないだろうな。誰かに頼めるわけないし。

部屋の隅に積み上げられた段ボールのうち、食材が入っている箱は二つ。湊はそれを両方抱え、部屋を出た。

























燭台切は、眠れなかった。新しい審神者を名乗った女のことが気になって眠れなかった。

(…あの子、ご飯どうしてるんだろう)

人間は憎む対象ではあるが、この本丸で死なれたら流石に夢見が悪いし、自分達の将来にも影響が出る。それに加え、この本丸の食事情を管理している燭台切にとって、彼女のあの顔色の悪さは気になった。

(……何か食べたいな)

ご飯のことを考えていたら、おなかがすいてきた。隣で寝ている大倶利伽羅を起こさないように気を付けながら、燭台切は布団を抜け出した。
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