おそ松さん

□今はまだ
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「俺、さくらちゃんのことが好きなんだよね」
「私、おそ松さんのことが好きなんです」

なーんて言っていた訳じゃない。
そんな話はどっちからも聞いていない。
でも、そんなこと聞かなくても分かるくらい二人の雰囲気はバカップルそのもので。
正直な話、松野家の末弟トド松は物凄くイラついていた。
バイトの合間等にたまに遊びに来るようになったさくら。
それは別に良い。
他の兄弟達も自分も、さくらを嫌っている訳じゃない。
むしろ好感を持っている。
しかし、彼女とおそ松が二人並んで話すとそこはラブラブオーラで包まれ、こっちは居たたまれない。
物凄く気不味い。
お互いに気があるのは、他者から見れば一目瞭然。
さくらは必ずおそ松の隣に座るし、おそ松を見て真っ赤になるし、何よりおそ松に会う日は服装や髪型にも気を使っているのがわかる。
おそ松はおそ松でさくらが来れば、例え直前まで機嫌が悪くてもコロッとご機嫌に変わるし、決まった曜日になるとさくらのバイトが終わる時間に合わせて、チビ太のおでん屋に飲みに言っている。
正しくはバイト帰りのさくらに会うために、飲みと称して待ち伏せしているのだ。
そして「さくらちゃんがさー」とさくらの話が多くなる。
お互いに意識しているのがバレバレで、こっちまで気恥ずかしい。
最近ではどうでもいいからさっさとくっついて、デートでもラブホでも行けと思っているトド松であった。
実の兄が目の前でこんな焦れったい恋をしているなんて信じたくない。
ってか、思いたくもない。

トド松は隣でカップを片付けるさくらをジトッと見つめた。
今はバイト中だが、客は殆どいないし、他のスタッフは休憩中。
ちょうど良い。

「あのさー、さくらちゃん」
「はい、なんでしょう?」
「さくらちゃんっておそ松兄さんに告白とかしないわけ?」

ガタガタガタンッ
トド松がそう口にした瞬間、さくらは持っていた食器を滑らせて落としそうになり、なんとかカップは守ったが自分が転んでしまっていた。
ってか、なんてベタな反応。

「え、ちょ、急になんですか…」
「気づいてないとでも思った?
バレバレだよ」

尚も誤魔化そうとするさくらに追い討ちを掛ける。
ここまで言わせておいて誤魔化すなんてさせてやるものか。
それくらいにトド松はこの焦れったい二人の関係に呆れていた。
さくらは観念したように真っ赤な顔で立ち上がり、トド松を見た。

「え、その…いつから気付いて…?」
「さくらちゃんをおそ松兄さんに会わせた時」
「最初からじゃないですか!」

穴があったら入りたい…と真っ赤になってさくらは俯いた。バレてないと思っていることの方がビックリである。


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