おそ松さん

□ミライユメミ〜ル
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4月。
新しい年度に入り、大学も始まりを迎えた。
さくらも無事に特待生としての地位を守った状態で進級することとなり、ホッと胸を撫で下ろす。
大学で行われた新入生歓迎会では定期公演で行った「fairytail」を上演。
新入生からも好評で、既に何人かの子からは入団のしたいとの話も聞いている。
学業も演劇も順調。
おそ松との関係も今のところなにも問題なし。
大学、サークル、バイトと忙しい日々ではあるが、時間が有り余っているよりは良い。
おそ松とも時間を作ってデートしたり、LINEや通話をしたりしているし。

「おや、さくらじゃないダスか?」
「え?
あ、デカパン博士。
こんにちは」
「こんにちはダス」

名前を呼ばれて振り返れば、そこにいたのはデカパン博士。
デカパン博士とは劇団ノアの団長、長篠優人を通じて知り合った。
彼は色々な発明をしており、劇団ノアで使う照明、音響機材などの開発をお願いしたこともある。
さくらは優人に連れられてよく来ていたため、デカパン博士とは何度も会っていた。

「新入生歓迎会は大丈夫だったダスか?」
「お陰さまで、大成功でしたよ」

fairytailでも、デカパン博士の発明品である照明機材を使わせてもらっていた。
それほど多くない予算であれだけの舞台が出来たのは、デカパン博士の協力あってこそだ。
本当に感謝している。

「ああ、そうダス。
さくらに渡したいものがあったダスよ」
「渡したいもの、ですか?」

なにかお願いしていたことでもあっただろうか。
そんな覚えはないし、優人からも聞いていないと思うのだが。
考えても思い浮かばず、首を傾げる。

「これダス!
その名も、ミライユメミ〜ル!」
「ミライユメミ〜ル?」

デカパン博士が出したのは、ミライユメミ〜ルという名の一粒のキャンディーだった。
聞きなれない言葉に、ついキョトンとしてしまう。

「このキャンディーを食べると、近い未来のことが夢でみることが出来るんダス!」
「つまり、予知夢ってことですか?」
「そういうことダスな」

予知夢が見れるキャンディーなんて凄い。
受け取ったキャンディーに、さくらも興味を示す。

「でも、どうして私に?」
「この前はさくらの誕生日だったダスからね。
誕生日プレゼントダス」

いつも美味しいお菓子をプレゼントしてくれるさくら。
デカパン博士からの、ささやかなお礼だった。

「一粒しかないダスから、みられる未来はひとつだけダスよ」
「ありがとうございます!」

このキャンディーを食べると、近い未来のことが夢に出てくるのだそうだ。
予知夢という不思議な体験が出来るとは、なんとも興味深い。
デカパン博士にお礼を伝え、さくらはウキウキ気分で家路についた。





「近い未来のことが夢に出てくるキャンディー、かぁ……」

パジャマ姿のさくらは、デカパン博士からもらったキャンディーを見つめた。
本当に、色んな物を作る博士だ。

「明日はトト子達と会う約束をしてるし、みんなのことが出てくるのかな?
ふふ、楽しみ」

どんな夢が見られるのかとワクワクしながら、キャンディーを口に放り込んだ。
イチゴミルクの味がするこのキャンディーが、一体どんな未来を見せてくれるというのか。
さくらはキャンディーを食べ終えると、歯を磨いてそのまま眠りについた。
楽しい夢を期待しながら。






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