short

□どっち?
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俺達六つ子のアイドルと言えば、それはもちろん幼馴染みの弱井トト子ちゃん。
可愛くて本当に自慢の幼馴染み。
トト子ちゃんの彼氏になれたらなーって常々思ってる。
けど、まぁ六人みーんな同じ人が好きなもんだから、ライバルは多い。
やんなっちゃうよなー。
ま、兄弟の中で誰が一番格好良いかって言ったら、やっぱ長男の俺だろうけど!

「あれ、トト子ちゃん?」

俺は前の方を歩く女の子に目が止まる。
なんだろ、いつもと少し雰囲気違うけど、イメチェンとか?

「トト子ちゃーん!
なになに、イメチェンでもしたの?」

俺はチャンスとばかりに女の子に駆け寄る。
女の子の肩に手を置けば、彼女は驚いたように振り返った。

「え、誰……?」

振り返った女の子は確かにトト子ちゃんと似てるけど、別人だった。
女の子も目をぱちくりさせている。
あ、その表情トト子ちゃんとにてる。

「あら、おそ松くん?」
「え?あ、トト子ちゃん!」

後ろから声をかけられて振り返れば、そこには見知った幼馴染みの姿。
俺は咄嗟に女の子とトト子ちゃんを見比べる。
やっぱ似てるよな?
え、なにこれどういうこと?

「あ、名前じゃない!」
「トト子ちゃん、久しぶり」
「久しぶりねー。
半年ぶりくらい?」
「うん、それくらい」

名前と呼ばれた女の子はトト子ちゃんと仲良く話してる。
え、待ってよ俺置いてきぼり?
どういう状況なんだよこれ。

「あの、トト子ちゃんその子は?」
「名前は私の従妹よ。
こっちに就職が決まったから、少しの間うちに居候するの」
「名前です。
よろしくお願いします」

そう言って笑った女の子の笑顔は本当にトト子ちゃんそっくりで、正直ドキッとした。
俺、女の子に笑顔向けられたのなんか久しぶりだな。
チビミちゃん以来だよ。
まぁ、あれ本当はチビ太だから女の子じゃないけど。

「俺は松野おそ松。
よろしく」
「こちらこそよろしく、おそ松くん」

それが名前との出逢い。
それからと言うもの、名前は俺を見かけると必ず声をかけてくれる。
別に嫌な気はしない。
女の子と話せるなんて童貞ニートの俺からしたら最高のご褒美だし、名前とは話が合う。
俺の話を興味津々で楽しそうに聞いてくれるし、一緒にいると楽だった。元気で、ニコニコしてて、それでいて御淑やかさも兼ね備えてる。
見た目もトト子ちゃんに似てて可愛いし、スタイルもそこそこ良い。
理想の女の子って感じ。
しかもボディタッチまでしてくれる。
本人は無自覚みたいだけど、それでもいい。
女の子から触れてくれるなんてなかなかないからな!

いつの間にか俺は名前と仲良くなっていて、友達のような関係になっていた。
一緒に飲みに行ったこともあるし、公園のベンチで駄弁っていることもある。
家から出れば、高確率で名前に会える。
俺は名前と話がしたくて、ほぼ毎日外に出ていた。
弟達から「おそ松兄さん、最近ご機嫌だね」と言われるくらい、俺の機嫌はすこぶる良かった。
そんな名前との関係は一ヶ月以上続いていた。




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