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□失恋セレナーデ
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好きな人が、自分以外の人を好きになったらどうする?
諦める?
諦めない?
諦めるにしても、諦めないにしても、どちらにしても悲しくて辛いことには変わりない。

そんな私の好きな人、十四松にも好きな人ができた。
名前は知らないけど、御淑やかで可愛らしい人だった。
今までもトト子ちゃんに対してはみんなアイドルのように崇めて、好きだなんだと言ってはいた。
でもそれはアイドルに向けるものとおなじだったから、気にしてなかったんだ。
でも、今回のは違う。
プリクラ大事にしたり、身だしなみ気を付けたり、会うことにドキドキして……
そんな十四松を私は見たことがない。
長年一緒にたのに、私には見せてくれたことがないその笑顔。
正直羨ましいし、私は見たことないっていうことに悲しくもなった。

そんな彼女に十四松は告白したんだけど、彼女は遠くに引っ越しちゃったんだって。
なら、私が狙えば良い?
そんな簡単にいくかよ馬鹿が。
彼女がいないなら私が!とも考えたよ。
勿論考えたさ。
でもさ、それってどうなの?
私は十四松に好きな人が出来たって知ったとき、応援したんだよ。
頑張れって。
なのに今更私も好きだった?
説得力もなにもないじゃん。
それに、十四松の気持ちを無視してるみたいで、なんだか良い気がしない。
それで付き合えたとしても、本当に私が好きなのか分からないじゃん。

「はぁ……飲もう……」

こうなったらやけ酒だ。
私は重い足取りでチビ太のおでん屋に向かった。
あそこ酒の種類は少ないけどおでん美味しいし、他の店よりは安いからね。
やけ酒にはちょうど良いんだよ。
チビ太に失礼だって?
いいんだよ大丈夫。
あいつも幼馴染みだし。






「いい加減止めろよ名前。
飲みすぎだバーロー」
「うっさいな。
ほっといて!」

私はビールをぐいっと一気に飲み干す。
やっぱやけ酒にはビールか日本酒よね。
カクテルとかサワーなんて女の子らしいやつじゃ、やけ酒なんてとてもとても。
それじゃお酒に失礼だもんね。

「チビ太、日本酒!」
「まだ飲むのかバーロー!」
「あ?
私に逆らうわけ?
いいから日本酒!!」

睨み付ければ、チビ太は呆れたように日本酒を取り出した。
いいじゃん別に、お金は払うんだし。
飲みたいんだから飲ませなさいよね。

「あ、おい!
こいつなんとかしてくれよー!」

チビ太が誰かに声をかける。
でも正直私にとってはどうでもいい。
その人が私の隣に腰掛けるのが見えて、私はそいつを見上げた。




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