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□私の策略
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私の従姉妹の名前は弱井トト子。
可愛くてスタイルの良い女の子。
でも、かなりの我が儘で、ドミーハーでもある。
それは昔からだった。
そして、そんな私はトト子ちゃんと姉妹と間違われるほど、そっくりな容姿をしていた。

年に数回しか会わない彼女から、よく幼馴染みの六つ子の話を聞いていた。
ハチャメチャで、でもトト子のことを可愛いと崇める信者の一人なのだという。
双子や三つ子ならまだしも、六つ子なんて聞いたこともない。
興味本意ではあったが、会ってみたいと思っていた。

そう思って数十年。
私は東京に就職が決まった。
職場はトト子ちゃんの家から比較的近かったため、六つ子に会ってみたいという思いもあってトト子ちゃんの家に居候することにした。
早くに就職が決まっている私は、2月頃には大学にいかなくてよくなった。
それをきっかけに、地方の実家からトト子ちゃんの家に引っ越しをしたのだった。
家につけば、トト子ちゃんは外出しているとのこと。
ならちょうどいいと、私は近くをブラついた。田舎の方に住んでいた私からすれば、都会の町並みは新鮮で、全てが物珍しい。
そんな時だ、彼が私に声を掛けてきたのは。

赤色のパーカーに、大きな目。
低すぎず、かといって高すぎない声。
一瞬で目を奪われた。
どうやら彼は、私のことをトト子ちゃんと間違ったみたいだ。
私が戸惑っていると、ちょうどよくトト子ちゃんが現れて、彼がよく聞く六つ子の一人、松野おそ松だと知った。
帰り道に六つ子は全員童貞ニートなんだとか、クソだとかいろいろ聞いたけれど、私の頭の中はそれどころではない。

トト子ちゃんの家につくなり、私はトト子ちゃんの腕を引っ張ってトト子ちゃんの部屋に入る。
そのまま後ろ手に扉を閉めて、トト子ちゃんに向き直った。

「名前?」

無言でうつ向く私に、トト子ちゃんは?を頭に浮かべる。
そりゃそうだよね、私はここまでずっと無言だったし。
でもごめんね、それどころじゃないんだよ。

「トト子ちゃん……
お願い、協力して」
「は?」
「松野おそ松くん、だっけ?
あの人を落とすのを協力してください!」
「はぁああ!?」

私が頭を下げて言えば、トト子ちゃんは驚いたように叫んだ。
いや、まぁそりゃそうなるだろうけどさ。
ちょっとうるさい。

「なに、なんなのあの人。
めっちゃ好みなんだけど。
これは落とすしかないじゃない!」
「ちょっと本気でいってんの!?
クソ童貞屑ニートよ!?」
「それがなに、愛があれば関係ない!
私そこそこいい企業に就職決まってるし!」

そう、私は彼に一目惚れしていた。
なんなの、あれ。
優しそうな笑顔にプラスして無邪気な子供みたいだし。
目はおっきいし、声も凄く好み。
ニートなのはちょーっと痛いけど、でも手放すには勿体ないくらい好みの男性だった。

「あんた男の趣味悪すぎじゃない?」
「ドミーハーのトト子ちゃんには言われたくないわ。
この前なんか石油王探してたじゃない」

そっちの方があり得ないし。
更に言えば、トト子ちゃんは結構性格ひん曲がってるからね。
こんなこと言ったら冷凍マグロとか飛んできそうだから、言わないけど。
ってか、人の好みに口出ししないで。

「ね、彼どんな人が好みなの?」
「知らないわよ。
ってか、私のことを可愛いっていう時点で、私なんじゃない?」
「それこそ女の趣味悪いじゃない」
「何か言った?」
「別になにも」





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