青氷姫


□気紛れ円舞曲
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「今までの話を要約すると、アレンが親父に預けられたのも、あのグローリーってのに付きまとわれてたのも、全てその『力』ってののせいだった、てことだよな?」
 サッチが白ひげや他の隊長たちの顔を見る。皆が頷き、白ひげがそうだと言うのを確認する。
「じゃあマルコが言ってた2つの疑問の答えも、同じなんだな?暗示とかって聞こえたけどよ」

「はい……」
 疑問をぶつけられたアレンが、申し訳なさそうに答える。
「子供の姿のまま、なるべく目立たず、皆さんの意識に残らないように……していました」

「けどそれなら寧ろ、野郎どもの中に紛れとけば良かったろうに」
 イゾウが言うと、たしかにそうなんですが、とアレンは答え、宴の時とかに困るんですと言った。余りお酒強くないので……と答えるその仕草にイゾウが微かに笑って、なるほどねぇ、と少し何かを察したようだった。

「でもよ、もしどんな姿にでもなれるんなら、何も子供の姿のままじゃなくても良かったんじゃねぇ?姿を変えて逃げちまうとか……」
 サッチが言うと、アレンは目を伏せ、小さな声で答える。
「確かに、ベイ姉さまのところにいた当初は普通に成長を隠さず過ごしてました。でも、私は自分の姿があまり好きではなくて……それで姉さまに相談して子供の姿でいることにしたんです」
「その後でグローリー……に見つかってしまったんですが、彼は、私が成長したら自分の伴侶にするつもりだと言ってました……だから、私は元の姿を絶対に見せる訳にはいかない、と思って……」
「彼は私が子供の姿のままなのは、彼の意に背いて、力で無理矢理成長を止めていると思っていたようです。それで……」
 他の姿になって、もしそれがバレてしまったら、力への期待が高まって、もっと自分への執着が強くなると思って試せなかった、と答えた。恐怖の刷り込みとでも言うのだろうか。本当なら逃げ出せたのに、恐怖で支配されていた精神は正常に判断できなかったのだ。それを聞いたサッチは、無神経なこと言っちまった、すまねぇ!と頭を掻いた。

 すると、それまで黙って話を聞いていた12番隊の隊長ハルタが口を挟んだ。
「伴侶って言うけどさ、さっきのグローリーってどう見ても男だったよね?アレンて本当は女なの?」

 その問いにマルコの肩が揺れた。サッチと白ひげだけが、彼の反応に気付いた。アレンは苦笑して、姿形だけなら、男でも女でもどちらにでもなれる、とだけ答えた。伴侶が男女どちらでも添えるというわけだ。その中途半端な返事を聞いて、マルコが複雑そうな顔をした。そしてそんなマルコの表情をサッチたちは見逃がさなかった。

「じゃあさ、アレンて今いくつなの?成長を止めてるんじゃないんだとしたら、今のその姿自体が、仮りそめなんだろ?」
 ハルタの容赦ない質問が続く。アレンはちょっと考えて、たぶん今年で26歳ぐらいだと思う、と答えた。年齢を数える習慣がないから分からない、とも言った。

 26歳かぁ……しっかり大人だね!とハルタが笑った。つられてアレンが微笑むと、ハルタは満足げに頷いて、早く本来の姿で生活できるようにしたいね!と続けた。それを聞いたアレンは、そうですね……と返したが、何か決意をしたらしく、拳を握って白ひげの顔を見上げた。

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