幻水U 長編 夢置き場
□光の姫君 第四章
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この美しい光景を
守りたいと思った…
〜 光の姫君 15 〜
「…ったく。何処行ったんだ…」
青いマントを風になびかせながら、男は森を歩く。
訓練が早めに終わり、酒場へ向かう途中で彼女に出会ったのは、やはり自分が運のない男ゆえか?
『…探していただけますよね?』
リィナのあの微笑みの裏が怖く、首を縦に振ってしまった自分が情けない。
「遠くに行ってないと思うんだが…」
探し人であるティアラは、ナナミと散歩に行くと言っていた。
この辺りならば湖が近く、散歩にも絶好の場所だろう。
湖に向かい歩いていくと、人影が遠くに見えた。
見覚えのあるシルエット。
近くに行き、声をかける。
「ティアラ!!リィナが探…し……」
言葉が続かなかった。
湖の辺に座るティアラ。
夕日を眺める彼女の姿は、一枚の絵を見ているようで。
見とれてしまった。
「……フリック?どうしたの?」
ティアラが気づいて振り返ったので、フリックはぎこちなく歩き出す。
「……リィナに探せって頼まれてな。」
用件を述べて、ティアラに近づく。
一緒に来ていたナナミは、遊び疲れたのか、少し離れた所で寝息をたてていた。
「そうなの?なら帰るわ。時間も遅いし。……でも、残念ね。」
「何がだ?」
立ち上がって淋しそうに呟いたティアラに尋ねると、緩く笑って彼女は答えた。
「夕日をね…もう少し見ていたかったの。」
「……」
ティアラが先程と同じ方向を向き、フリックは黙って彼女を見つめた。
近くで見ていても変わらず美しく、その光景はやはり絵のようで…
「この景色も夕日も日々変わるでしょ?…けれど、私達人間の都合でそれを変えてしまうのは…悲しい事よ。」
「……あぁ」
「私…ここの夕日も景色も好きよ。…守りたい。」
彼女の強い意志。
その眼差し。
フリックにとっても、
守りたいものは増えた…