幻水U 長編 夢置き場
□光の姫君 第九章
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私が失った記憶は、
想像以上に、
大切なモノだった……
〜 光の姫君 31 〜
朝の柔らかな日差しが、頬にあたる。
揺れるカーテンは遮る事を止めていて、直に広がる温もりが心地よい。
ーーコンコン
「ティアラ様、お目覚めですか?…入りますよ?」
ノックと共に聞こえてきた声の主は、返事を待たずに中へ入ってくる。
「……あ、また窓開けっ放しじゃないですか。全く…、用心して閉めて下さいと何度も…」
続く小言に嫌気がさし、ティアラは相手に背を向ける形で寝返りをうった。
「ーーだからどんなに……って、あ、またそんな態度で聞かないつもりですか?…困った姫君ーー」
「…あのねぇっ!?」
肩を竦めて呆れている男を遮って、ティアラは声をかけた。
勿論、とっくに目は覚めていて、すでに起き上がっている。
「…私まだ信じてないのよ!?姫なんてーー」
「呼びますよ。…あなたの記憶がなくても、事実は事実だ。」
「……」
男の真剣な眼差しに、言葉が出ない。
「………私は、どんな事があろうと、姫を…あなたを守ると誓っています。…それを覚えておいて下さい。」
静かに話終えた男は、悠然と部屋を出ていった。
「そんな誓い…覚えてないわよ………」
静かな部屋に、ティアラの声がぽつりと響いた…。