思い出の欠片


□U、再会
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ーinパンドラー

ベアトリクス「…レイム、書類追加はやめて頂戴。」

長引いていた仕事が先程終わって、少しの息抜きにパンドラの廊下を歩いていると、書類の束を腕いっぱいに持った一応上司、レイム=ルネットの後ろ姿を見つけた。

レイム「ベアトリクスか。いや、これは違う。お前宛てではなく、私宛てだ。」

青い顔をして振り返った彼は、「まだ終わっていない書類が残っているのに…」とブツブツ言いながらまた歩き出した。

ベアトリクス「貴方の?珍しいわね。貴方が終わらせてないなんて。」

レイム「嗚呼、これは違う奴の書類が回ってきているんだ。」

私は彼の隣に行き、
半分書類を半ば強引に受け取った。
紙と言えども量が増えればまるで石を持っている錯覚に陥る。
私は「すまない。」と言う彼を一目しながらまた口を開いた。

ベアトリクス「違う奴?その人が書類に追われていて詰まらせているの?」

レイム「いいや、その真逆。サボり魔の神出鬼没な奴だからだ。」

レイムは溜め息をつくと、
前方を見てまた顔色を変えた。
今度は青ではなく、赤に。

私もつられて見ると、
其処には白髪の如何にも
陽気そうな男性が鼻歌を歌いながらこちらに歩いて来ていた。

いや、待て。
あの人は…………

そんな事を考えていると、
レイムが私に書類の束を押し付け、彼の元へと走って行った。

ベアトリクス「え」

レイム「ザークシーズ=ブレイク!お前こんな所をほっつき歩いていたのか!」

ブレイク「おやー?レイムさんじゃありませんカ」

男性、ザークシーズ=ブレイクは袖で見えていない手をパタパタと振りながらのんびりと言葉を紡ぐ。

レイム「仕事をしろ!お前の仕事が私に回ってくるんだぞ!」

嗚呼、彼が先程の話の
中心人物だったのか。
如何にも"サボり魔"と言う名の似合う気分屋な人柄の様だ。

ブレイク「もうっ!固い男は嫌われますヨ!」

彼はそう言うと、レイムの脇をツンッとつついた。「ひゃいっ!」と変な声を上げたレイムは、今にでも眼鏡が割れそうだ。

書類の重さに耐えながら二人へ近付いていくと、彼と私の目が合う。
瞬間、彼は見えている片目を大きく見開いた。

ブレイク「貴女は……」

ベアトリクス「……?」

私は微かに微笑みながら首を傾げて知らない振りを決め込んだ。
当たり前だろう。此処はパンドラの敷地内。こんな所で彼との再会を喜ぶべきではない。

レイム「嗚呼、紹介するザークシーズ。彼女はベアトリクス。ヘンリエッタ家の令嬢で私の部下だ。戦力はお前とほぼ同等だぞ。」

ブレイク「ベアトリクス………」

ベアトリクス「"初めまして"ザークシーズ=ブレイク。私はベアトリクス。」

私は片手で書類をなんとか支え、愛想良く彼にスッと手を差し出した。

ベアトリクス『よろしく。』
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