思い出の欠片
□X、チェイン
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《俺は…!知ってしまうのが…
怖いんだ……》
どうして……
『……おかえり。
オズ=ベザリウス……』
どうして…
貴方は"独り"なの…?
オズ「……はっ!!」
ベアトリクス「…随分と魘されていましたねオズ様。」
馬車で館へ向かっている最中に、オズ様とビーラビットはいつの間にか寝てしまっていた。
屹度疲れて居たのだろう。起こすのも悪いので、レイヴンが先に様子を見に行き、私は彼等の傍に居る事にした。
レイヴンが館へと歩いて行って数十分程で、オズ様がガバッと音を立てて起きた。
随分と魘されていたので、声を掛ける。
オズ「…ベアトリクス…ちゃん…?」
彼が私の事を「ちゃん」付けで呼ぶと同時に私は顔を歪ませた。
彼も急な事に驚いたのか、
「うわっ!」と後ずさった。
ベアトリクス「変な呼び名はやめて下さい。普通にベアトリクスで構いません。」
オズ「あ…じゃあ、ベアトリクス。俺にも敬語や敬称は要らないから!」
ニコーッと輝かしい笑顔を向けた彼に私は少し戸惑った。
そして彼はガチャッと馬車の扉を開けた。
オズ「そっか。もう館に着いたんだ」
ベアトリクス「ええ。貴方が寝ている間に。レイヴンはパンドラのスタッフと話をしに行ったわ。」
オズ(…あれ…この館、こんなだったっけ?)
10年前とは比べ物にならない程
荒れ果ててしまったこの館に、
私は少し嫌悪感を抱いていた。
レイヴン「オズ」
其処へ話を終えたレイヴンが
戻って来た。どうやら何か館の中で問題があったらしい。
レイヴン「少し様子を見てくる。ベアトリクス、オズ達を頼むぞ」
私はしっかりと頷くと、
馬車のソファにもたれかかった。
レイヴンが去ると、
オズ様は馬車の足掛けの所に座り込んだ。
ベアトリクス「…どうかしたの、オズ」
オズ「いや…違うんだけど、やっぱりあいつ、なんかギルに似てるなーって」
それもそうだろう。
何せ本人なのだから。
私が黙っていると、誤解をさせてしまったみたいで、オズ様はその人物について説明をしようとする。
オズ「あっギルって言うのは…」
ベアトリクス「知っているわ。ギルバート。貴方の大切な従者でしょう…?」
私が彼の言葉を遮って
言うと、彼は一瞬驚いたが、
直ぐ優しくフワッと笑った。
アリス「…ギルとは…」
同時に、ビーラビットが
モソモソっと起きた。
オズ「ごめん、起こしちゃったね」
アリス「ギルと言うのは…
お前が切り捨てたあの餓鬼か」
嘲笑しながら告げる彼女は
本当に相手の事を考える事が出来ないらしい。
ベアトリクス《……変わっていない》