思い出の欠片
□\、記憶
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オズ視点ー
ベアトリクスを置いて逃げてしまった後、
穏やかに笑っているアリスを見かけた。
だがギルは躊躇もせずに彼女を撃った。
俺が驚いていると、
足元からまたあの声が聞こえた。
?「それは歪んでしまったアリスの記憶。此処で再生される記憶は侵入者を排除する。」
足元の黒い靄から出てきた大きな手に
ギルの銃は飛ばされてしまい、
俺は走ってそれを取りに行く。
大きな手の正体はやはりチェシャ猫だった。
彼は足元から天井からかけられている
シャンデリアへと移動した。
チェシャ「そいつらに取り込まれたら最後、時の狭間で永遠の苦しみを味わう事になるぞ。それはとても辛い事。だからどうせならチェシャのエサになれ。」
オズ「待って!つまり此処には、アリスの記憶があるって事か!?」
銃を拾う前に気付いた事を
チェシャ猫に問う。
すると、彼から驚くべき事が告げられた。
チェシャ「?…何を言っている。この空間自体がアリスの記憶によって作られたものだ。」
驚きのあまり俺は立ち止まった。
そしてチェシャ猫をじっと見つめる。
この場所がアリスの記憶で
作られたものなら、
先程のアリスは過去のアリス…?
チェシャ「ところでそっちの黒いの。お前の中には鴉が居るな?何故籠から出さない。チェシャはお前より鳥肉を食べたい気分なんだ!」
ギルが怒って彼に力を使おうとするが、
その瞬間、俺の胸に刻まれた刻印が痛んだ。
気付いたギルが此方に目を奪われている間に
チェシャ猫は彼の腕を掴んだ。
チェシャ「…何だお前。鴉で黒うさぎの力を封じているな?…残念だ。それでは鴉に会う事は出来ないな。」
俺が銃を拾った瞬間、
ギルの胸元がチェシャ猫の
鋭い爪に裂かれる。
見た感じかなり深手の様で
彼はフラフラとよろめき、
足元を踏み外して
そのまま下へと落ちていってしまった。
オズ「ギッ…ギルっ!!」
だが彼を心配している暇さえも
チェシャ猫は与えてくれなかった。
大きな手で地面に顔を押さえつけられる。
チェシャ猫「知っているぞ。お前達はアリスの記憶を集めているんだろう?何故だ。何故そんな事をする。」
オズ「んなの…アリスがそれを望んでいるからだ!!」
俺の発した言葉により、
先程までのチェシャ猫とは違って
彼は凄く怒っていた。
俺は勢いのまま近くの部屋に放り込まれ、
首元を掴み上へと上げられる。
チェシャ「…嘘つき。嘘つき嘘つき嘘つき!!チェシャだけは知っている。あの子は…アリスは、全てを忘れてしまいたかったんだ!!だから、自分の意志で記憶を破り捨てたんだよ!!」
入った部屋は鏡だらけだった。
その柱に俺は押し付けられる。
アリスが自分で
記憶を破り捨てたと言う話に、
耳が釘付けとなり、思考が停止しそうだった。
チェシャ「それぞれのカケラはお前達の世界に散らばり、この記憶のみが自らを殻の中に閉じ込めた。チェシャの役目は此処でアリスの記憶とベアトリクスの思い出を誰にも見せずに護り続けること。此処にあるのはアリス達の、最も消し去りたかった記憶だから。」
オズ「…消したかったもの?」
俺は聞き逃さなかった。
彼は、ベアトリクスの思い出も
護っていると言った。
じゃあ、チェシャ猫とベアトリクスは
元からの知り合いだったのか?
だから、先刻もチェシャ猫は、
ベアトリクスを庇ったのだろうか。
チェシャ「…そう、アリス達が全てを失った日の記憶だ。」