思い出の欠片
□U、再会
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ブレイク「私はレインズワース家に仕える使用人、名をザークシーズ=ブレイクと申しマス。宜しくお願いしますネ、ベアトリクスさん♪」
彼は薄気味悪い仮面の様な偽物の笑顔を顔に貼り付けると、大きな手で私の手を握り返した。
ブレイク「そしてこの子はエミリー♪」
エミリー「よろしくなー!小娘!」
ザークシーズ=ブレイクは、肩に乗っている可愛らしい人形を腹話術で紹介した。レイムがピクっと少しだけ驚いていたのが視界の端に映った。
ベアトリクス「よろしく…。レインズワースにはいつもお世話になっているのよ。特にシャロンとは、良い関係を築かせて貰っているわ。」
私がそう発すと、
彼はキョトンと首を傾げた。
ブレイク「オヤ?お嬢様をご存知で?」
ベアトリクス「えぇ、ルーファス様の命でシェリル様にお手紙を届ける事も多いから…でも不思議ね。」
私はその傾げた彼の顔を下から覗く様に見上げ、
ベアトリクス『貴方とは、一度も会わなかったわ。』
声色を変えてそう言った。
ブレイク「……!」
辺りに静寂が漂うが、
それを私はわざと破る。
ベアトリクス「………あの…レイム。そろそろ、持ってほしいんだけど…」
レイム「あっ!すっ、すまないベアトリクス!」
そう、私は先程レイムに書類を押し付けられた。そして、ザークシーズ=ブレイクと握手をする為に片手で大量の紙束を持っていたままだったのだ。
だが私の力では長時間もつ筈がなく、プルプルと震えていた。
レイムに書類を返すと、私は満面の笑みを浮かべ、
ベアトリクス「気が向いたらその書類、手伝ってあげるよ。」
そう言い残してその場を後にした。