思い出の欠片


□X、チェイン
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其処から私達は
噴水広場まで移動して
オズ様は昔の話をしだした。

オズ「…もう5年くらい前かな…。オスカー叔父さんが、ギルを連れてきたのは…」

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オスカー「オズ!ちょっと来てくれ!」

妹のエイダを膝に乗せ、
本を読み聞かせていたオズを
叔父であるオスカーが呼んだ。

オズ「ん?」

オスカー「紹介しよう!この子はギルバート。今日からお前の従者になる事になった!」

その子供はある日突然、
屋敷の庭に倒れていて自分の名前以外の事を、殆ど覚えていなかった。

オズ「お前!俺の従者になるのか?」

ギルバート「っ!…はぃ…」

その所為か、オズは
彼が何かに怯えている様に見えた。

オズ「じゃあ、俺の言う事何でも聞くんだぞ!聞かなかったらお仕置きだからな!あと、俺の嫌いな野菜も代わりに食べるんだぞ!」

ギルバート「…………はい…」

そして、オズは一枚の
真っ白な紙に何かを書き出した。

オズ「よし、出来た!契約完了!証人はオスカー叔父さんであーる!」

と、契約の紙を見せつけながらオスカーをもででーん!と見せつけた。

オズ「これでお前は正式に俺の従者だ!」

オズが其処まで言うと、
オスカーはメイドに何か耳打ちをされ、「悪いオズ、急用が出来てしまった。ギルバートの事、頼んだぞ」と言い残して部屋を後にしようとした。

ギルバート「えっ…まっ、待って…!」

ギルバートはそんなオスカーを引き止めようと走り出し、カーペットにつまづいて床に倒れた。

その拍子に棚の上に置いてあった花瓶がギルバート目掛けて落ちてきてしまった。

オスカー「ギルバート!!」

ギルバート「ひっ…!!」

だが……

((ゴッ

という音は聞こえても、
ギルバートには全然痛みが来ない。

すると、頭上から「いってぇ…」と言う声が聞こえてきた。
オズがギルバートを庇っていたのだ。

ギルバート「駄目です!僕なんかを庇っちゃ…!だって、マスターを守るのは僕の仕事の筈!!なのに…!」

彼が声を荒らげてそう
叫ぶが、オズは逆に目を点にした。
挙句彼に拳骨をした。

オズ「なんだマスターって、わけわかんない事を。いいか?お前は俺の従者になったんだ!つまり、これからは何があっても俺がお前を守るんだよ!」

オズは座っているギルバートと目線を合わす様に床に膝をつけてしゃがんだ。

オズ「それが、主たる者のつとめだからな!」

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オズ「…それからは、毎日が楽しかったなぁ。気弱で泣き虫で…でもすげえ優しい奴で、いつも傍に居てくれた。彼奴は俺にとって、誰よりも大切な友達なんだ!」

過去話が終わってオズが笑いながら告げると、ビーラビットは少し顔を曇らせた。

アリス「…そんなのくだらん。友だのなんだの…。結局、弱い奴が群れたがっているだけだろう!私には必要ないものだ!」

その瞬間、無意識に私の体は反応し、辺りにパァンッと言う乾いた音が聞こえた。

アリス「なっ…!!」

そう、私が彼女の頬を叩いたのだ。

ベアトリクス「…今の貴女は独りだからそう思えるのよ。貴女のその言葉がどれほど罪深きものか…もう一度よく考えなさい。」

私はそう発すと、
赤くなった頬を押さえながら
呆然としている彼女を放って
二人から離れた。
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