思い出の欠片


□Z、アヴィスの意志
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何が起こったのか。
私は何も思い出せない。
記憶が混乱しているのか、
頭がボーッとする。
真っ暗闇の中、理解しているのは
唯々自分の体が堕ちていると言う事だけ。

『汝の罪、それはアヴィスの平穏を脅かし、その禍罪の眼を持って生まれ落ちた事である。』



……………嗚呼。
そうだ。そうだった。
思い出した。
確か昨日、レヴィがグレンとなった。
そして今日、私は自分の弟の手によって
アヴィスへと堕とされた、
堕とされたのだ。
手足は鎖で繋がれて、身動きが出来ない。

段々と意識が戻って来て、
堕とされた時の記憶が呼び戻ってくる。
辛そうな顔をするレヴィ改めグレン。
そして静かに笑う私。
鮮明に思い出す。
彼の顔が頭から離れない。
だがもう後戻りなど不可能。
私は唯この落下に身を預けた。


筈だった。
だがいつまで経っても
アヴィスの底へと辿り着かない。
いや、若しかしたら此処が
アヴィスの深淵なのかもしれない。
私は綺麗なアヴィスしか見た事がないから。

なんて事を考えていると、
急に視界が白くなった。
光だ。光が目に刺さる。
眩しくて目を開けるのも辛い。
これは私がよく知っている光だ。
其処で、私の視界は完全に消えた。






((ホワホワ…

ベアトリクス『……コレは、何?』

私の目の前には光の塊…?
の様なものがある。
ホワホワと少しだけ動いている。
それはまるで生きているかのよう。
其処まで考えて、私は気付いた。

ベアトリクス『…いいえ、ゴメンなさい。"貴方"は…誰?』

私がそう話しかけると、
光は応えるかの様に私の周りを
フワフワ飛び出した。
この子はアヴィスの核だ。
周りとこの子の状況からして、
間違いない。

ベアトリクス『…フフ…深淵の向こう側で滅びろって事ね…』

私はこの子の事を
神から任されたのだろう。
最も、神など生前は
信じていなかったけれど。
この際信じてみるとしよう。

ベアトリクス『…私はベアトリクス。貴方の…初めての友達よ。』
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