思い出の欠片


□Z、アヴィスの意志
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オズ「…なんだよ、アヴィスの意志って…」

ベアトリクス「簡単に言えば核の意志であり、今のアヴィスを創り上げている存在よ。彼女が生まれた事で、チェインは荒ぶり、アヴィスは闇に覆われた。と言われているわ。」

オズ「…"彼女"?」

ギルバート「…お前、何でそんな事を…」

目が覚めると、チェック柄のタイル床の上に唯立っていた。
自分達が立つ場所だけスポットライトが当てられた様に輝く。
レイヴンとオズに困惑した目で見られたが、私は一人歩き出す。
少し歩くと、ビーラビットが
椅子に座って捕らわれていた。
その頭上には兎の人形が笑っている。

オズ「あの兎が…パンドラとバスカヴィルが求めているモノ?」

ベアトリクス「あれは仮の姿よ。本来は……」

私は言いかけた所でやめた。
これ以上言うのは気が引けたのだ。
すると、意志は私達に気付いた様で、
ゆっくりと近付いてきた。
そして私とオズの周りを飛び交う。

アヴィスの意志『嗚呼…やっと貴方に会えた。私、ずっと待ってたのよ。…ねぇ、早く迎えに来て。色んな人形を用意しているわ。二人で遊びましょ。眠くなるまでお話して、それでそれで…ねぇ?愛しい人…』

彼女はオズの頬に手を添えた。
オズはそれが温もりを持っていたのに
驚き、突き飛ばす。

オズ「俺は君なんて知らない!それより、アリスを離してくれないかな。」

アヴィスの意志『…どうして?あの子はチェインなのよ、いずれは貴方を滅ぼす存在なのよ?……ねぇ、どうして??』

アヴィスの意志の顔が、
可愛らしい兎からまるでホラーな、
目から血の涙が流れだした。
オズの顔にその雫が垂れ落ちる。

ギルバート「オズ!」

ギルバートが彼の元へ
走って行ったが、アヴィスの意志に
よって弾き飛ばされた。

アヴィスの意志『私と彼の邪魔をしないで。……ねぇ、貴方はあの子の事何も知らないのに、どうして傍に居ようとするの?』

その問いかけに、オズは少しだけ
息をつまらせた。
屹度考えた事もなかったのだろう。

アヴィスの意志『そうよ、あんな自分が何者かも、生まれた理由すら知らない子供なんて、貴方に相応しくないわ。なのに貴方を横取りして…。あんな子、"生まれて来なければ良かったのに"!!!』

空気が凍った。
"生まれて来なければ良かったのに"
彼女がそう言った瞬間に。
私の体は、まるで悲鳴をあげていた。

アヴィスの意志『ねぇ、貴女はいつ帰ってきてくれるの?早く一緒に遊びたいの。"あの日の様に"…。』

彼女は、今度は私の所に寄ってきて、
周囲をフワフワ飛ぶ。
顔は恐ろしい程変わっていて、
まるで、"血染めの黒うさぎ"のよう。

ベアトリクス『……まだ帰れないわ。私は、まだ為すべき事をしていない。』

アヴィスの意志『…どうして?貴女もあの子の傍に居るの?どうして…どうして…どうして!?』

オズ「…ハハッ」

突然、その場に似つかわしくない
笑い声が耳に届いた。
その声の主はオズだった。
彼はいつもと変わらない
幼い笑顔を向けている。

オズ「確かに君の言う通りだ。俺はアリスの事なんて、何も知らないよ。…でもね、放っておけないと思ったから。何処か似ている気がするから。だから、俺はアリスと居なきゃいけない。」

オズがそう言った瞬間に、
アヴィスの意志は目を見開き、
「何で」と繰り返す。

オズ「根拠なんてないよ。俺は唯、自分の中の確信に従ってるだけだから。それにね、残念だけど俺は…君とは話しが合いそうにない。」

オズがアヴィスの意志を抱き締めたかと思ったら、彼は銃を取り出して彼女を撃った。
屹度レイヴンがドルダムに操られている際に落とした銃を拾っていたのだろう。
彼女…、仮の姿の兎の頭から血が流れる。

オズ「折角のお誘いなんだけど、生憎今は、人形遊びよりも"宝探し"に夢中なんだ。」

アヴィスの意志は銃で撃たれた事により仮の姿を保つ事が出来なくなり、
兎の人形はパサッと床に落ちる。
同時に空間に亀裂が入った。

『貴方は屹度後悔するわ。私よりも、黒うさぎを選んだ事を…』




空間からなんとか脱出すると、
3人は可愛らしく
皆で縮こまって眠っていた。
いや、気絶していた。
私は1人、3人の横に立つ。

ベアトリクス『…こんなモノかしら。まさかあの子がこんなにも早く干渉してくるとは思っていなかったけれど…。』


《あんな子、生まれて来なければ良かったのに!!》


あの叫びは、本当に黒うさぎだけに
向けられたものだったのだろうか。
私にはその疑問が脳裏で飛び交う。

ベアトリクス『…アリス』












???『…早く、迎えに来て。』
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