短編小説
□彼女の存在
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「気をつけてね〜また明日」
いつものようにレッスンが終わり、一人帰路に着く。
「なーちゃん」
そんなうちの背に、誰かが声をかける。
「かずみん‥どうしたん?」
なんかうちに用かなと思って問うも、かずみんは笑っただけだった。
そのまま、流れで二人並んで帰る。
「なーちゃんさ、みんなとベタベタすんの結構苦手だよね」
不意にかずみんが言う。
唐突で驚いたけど、こくりと小さく頷く。
「だからあたしさ、今みたいになーちゃんの隣居て良いのかなって‥結構思ってたりしてさ」
かずみんの突然の告白に、うちは思わず反論してた。
「かずみんなんでそんなこと心配するん?うちにとってかずみんは特別な存在なんや。かずみんだけにはむしろ‥側に居て欲しい思っとるのに‥」
「なーちゃん‥」
マシンガンのような勢いで話し始めたうちを、かずみんは驚いたように見つめる。
「あ、ありがとう」
うわー恥ずいー、なんて照れたように手で顔を覆うかずみん。
うちも自分の言ったことを頭の中で反芻して、やっとその内容の危ない感じに気づいた。
「あ、ちゃうねんっ、変な意味やなくて‥」
「あー大丈夫大丈夫。あたしも誤解させちゃったみたいだから」
「‥?」
「なーちゃんベタベタされるの嫌だと思うけど、あたしやっぱなーちゃんの側でその可愛い顔眺めてたいな‥って続けようと思ってた」
「‥え、‥ほんま?」
「うん」
かずみんはいつもの戯けたかずみんに戻って、ちょっとかっこつけすぎたなぁ、なんて言って頭を抱えてる。
「かずみん、ありがと」
「‥?何が?」
「んー秘密🎶」
えーそんなのありかよぉ、と、かずみんが隣で嘆いている。
かずみん、いつもうちを守ってくれてありがとう。
これがありがとうにこめられた本当の意味。
Fin