短編小説

□私と彼女の関係
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※若月視線

あの企画以来、私と玲香に対する冷やかしが急激に増えたと感じる。



生駒ちゃんを筆頭にからかってくるメンバーを避けるため、なるべく誤解を生むような行動は慎もうと思っている。‥のに、



「わかちゅき〜」



空気を読もうともしない玲香。



いつものようにぎゅーっと抱きついてくる。



「もー、良い加減親離れしな玲香」



「えーあたしが子供なの?」



的外れな問いにため息をつく。



「みんなに誤解されてからかわれるの嫌でしょ?」



「あたしは別に構わないけどなぁ」



不満そうに唇を尖らせる玲香。その姿がとても可愛くて、緩みそうになった顔を慌てて逸らした。



「ほら。そろそろみんな来るから離れて」



私たちしかいなくて静かな楽屋に、廊下からのガヤガヤが伝わってくる。



「むー‥しょうがないなぁ」



玲香はイヤイヤといった感じで私の背中に回していた腕を解いた。



‥だが、



「っわ!」



何故か勢いをつけて私から離れた玲香は、後ろにあったパイプ椅子に足を取られて体を仰け反らす。



そこからはスローモーションだった。



玲香の驚いた顔がだんだん遠のいていって‥



すんでのところで手を掴むことができた。のだが、



‥私より少し軽いだけの立派な成人女性を片腕で支えられる訳がなく、



「っ痛〜‥」



私と玲香は折り重なるようにして倒れる。



「ごめん大丈夫玲香⁉」



助けるどころか私の体重まで加えてしまった。



「あー平気、だいじょう『おっはよー。一番乗り〜‥‥じゃないみたいだ』



やけにハイテンションで入ってきたのは、まいやんだった。



冷静に自分が一番乗りではないことを口に出して確認して、私たちをガン見したまま後ろ歩きで部屋を出て行った。



「「‥‥」」



これは、結構な誤解をされたみたいだ。



「‥誤解、されちゃったね」



玲香も同じことを思ったらしく、ぽつりと呟く。



今の自分たちの体勢を客観的に見ると、かなりやばいことになってる。



ひと言でいうと、



「‥襲われてるみたい」



玲香が顔を赤らめて言う。



「‥ガチで照れないでよ」



玲香を見ていたら私まで恥ずかしくなる。



「でもさ、」



玲香は赤い顔のまま言葉を続けた。何故か嬉しそうな表情で。



「あたしにとっては良かった、かも‥」



「‥何が?」



うっすらと、玲香の言いたいことは分かった。何故なら、多分、私も同じことを思っているから。



「だからぁ‥‥‥誤解されるのもなんだか楽しい‥って思ったり」



恥ずかしいのか、はっきりと言わない玲香。



その頬が真っ赤に染まってるのを見て、私まで恥ずかしくなってくる。



「‥ってかさ、まいやん出てったっきりなんだけど‥他のメンバーは‥?」



「あ‥」



すっかり忘れていた。



と、外からまいやんが何かを言っているのが聞こえる。



『ねぇねぇなんで入っちゃだめなのまいやん?』



どうやら生駒ちゃんの質問にまいやんが答えてるらしい。



『生駒ちゃん、これは大人な事情だからあまり詮索しないであげて。ただちょっと玲香とわかがアレしてるだけだから』



「‥!」



雑〜な、なんかよくわからないけど下ネタっぽい説明に、思わず吹いた。



「ちょっ‥まいやん⁉偽の情報流しすぎだから!」



慌てて部屋の外へ叫ぶが、何故か応答がない。



とびらの向こう側からは、メンバーが息を潜めて耳をそばだてている様子が手に取るように分かる。



完全に誤解されてるけれど、今は『誤解だから』のひと言で済ませたくなかった。



「‥しばらくみんなの想像力を膨らませてあげよっか?」



どうせしばらくはああやって扉の前に張り付いてるだろうし、あのまいやんのことだ、扉を開けるような無粋な真似はしばらくはしないだろう。



「なんかいたずらしてるみたーい」



玲香は楽しそうに私の下で笑った。



その笑顔がなんだかとても愛おしくて、私は一つ勇気を出してみる。



「‥え?」



玲香は私の唇が見つめたまま固まる。



「いたずらしてみた」



ニヤッと笑うと、玲香はさっきよりも真っ赤っかになって私の肩に顔を埋めた。



「もう‥」



怒った玲香も可愛いな〜って思っていたら、反撃を食らった。



「っ⁉」



私でさえおでこで止めたのに、玲香はなんと‥唇に‥。



「奪っちゃった🎶」



玲香がとても可愛く笑うから、それに免じて今回は許す。



「わかちゅき〜だいすきだよ」



聞き慣れた台詞だけど、今日は一段とその言葉が嬉しい。



「私もだよ、玲香」



私はそう言って、自分から唇を奪った。




Fin




その頃廊下では⇨
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