短編小説

□理由
1ページ/1ページ


※伊藤目線




彼女に構ってもらいたくて、私はいつも暇そうにしている彼女にちょっかいをかける。




「花奈、構ってー」




そうすると、彼女は決まって嫌そうな顔をして言う。




「やだー」




でも私もちょっとやそっとじゃ引かない。




うざいぐらい纏わり付いて、花奈がいやいやと振り返るのを待つ。





「きもい〜きもいよ万理華〜」




そして彼女が定番の暴言を吐くまで、私はくっつき攻撃を続けるのだ。




「きもいってば」




何度目かのキモいを言われた時、私はふっと悲しそうな表情をしてみせる。




するとなんだかんだ優しい花奈は、すぐに私に向き直ってぎこちなくも構ってくれるのだ。





ふっふっ‥チョロいもんだぜ。





「ねぇ花奈〜、眠い」




背中に張り付きながら言うと、花奈は面倒臭そうに言う。




「誰かに膝枕してもらったら良いじゃん」




誰か、ねぇ。




「花奈がしてよ、膝枕」




「‥‥‥きもいです」




花奈が言い飽きたといった風に定番の暴言を吐いた。




「‥分かった、じゃあ小百合にしてもらう」




花奈の背中から離れ、小百合のところへ行こうとしたら、パッと腕を掴まれた。




振り向くと、そこには呆れと恥ずかしさが混ざったような表情で私を見上げる花奈が。




‥可愛い。





「万理華さん‥そんなにわたしをツンデレキャラにしたいの‥?」




ばれてたみたい。




「うん」




「なんでよ‥‥」




「そりゃもちろん可愛いから」




「‥‥‥」




黙ってしまった花奈。




顔を覗き込もうとすると、サッと逸らされた。




でもわたしの目は誤魔化せない。




しかとこの目で真っ赤になったほっぺたを見ましたとも。




「照れてる可愛い〜」




「あーもう万理華なんて嫌いだー!」




花奈はウガーッと叫び声をあげて机に突っ伏した。




「じゃあなんでさっき私が小百合のところ行くって言ったら止めたの?」




「‥‥そりゃ‥」





「?」





花奈は突っ伏したまんま答えた。







「万理華のことが好きだからに決まってんじゃん」




‥え?




「‥‥今なんて?」




「なんでもありません」




花奈は頑として顔を上げようとしない。




「私も花奈のこと好きだよ」




「聞こえてんじゃん!」





花奈がバッと顔を上げた。





案の定、顔が真っ赤になっている。





可愛いなぁ花奈は。





「花奈のそういうとこ好き。すぐ照れるとこ」





「嬉しくない…」





花奈は完全に私から背を向けていぢやけている。




いじめすぎたかな?






そっと背中に張り付いてみても引きはがされなかったので怒ってはいないだろう。





「デレの時の花奈も好きだけどいつものツンな花奈も好きだよ」





「万理華ってほんとドエム‥」





花奈が溜息をつくのが聞こえた。





「こんな私、きもい?」




花奈のが耳元で囁いてみる。





花奈はしばらく黙って、小さく呟いた。





「きもくないよ」





チョロい花奈も好きです。





fin

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ