君に依存中

□◇第3話◇
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目が覚めると、あたりには緑が広がっていた



「ここ、どこ……これは夢?」



あたりを見回しても人は居らず建物も見えない、自分の住んでいた町にはこんな所なかったはず



「本当に、違う世界に来てしまったの?」



目の前の現実を受け入れる事なんて到底できない


私の帰る家は?家族は?友達は?学校は?


考え出せば出すほど頭の中がごちゃごちゃになる


なくなっても大差ないと思っていた事はなくなってからその重要さに気付き、なくてはならない事だったと気付かされる



「あの退屈な世界に、戻りたい……」



悲しみからか寂しさからか目からは大粒の涙がこぼれてくる



「私、これからどうすればいいの……」



拭いても拭いても止まらない涙を流し続けたまま色々な事を考える


何も分からない孤独な世界


泣いていたって何も変わらない、強くならなくちゃ、この世界で1人で生きていけるようになって、この世界から抜け出す方法を考えなくちゃ……



「よし……」



いつまでもうじうじしてても何も変わらない、何かすれば元の世界に戻れるかもしれないじゃない



「えっと、まず……ここはどこなのか分からないといけない…………ん?」



ふと制服のポケットに何か入っている事に気付き何かを取り出してみる



「紙切れ?」



ポケットから出てきたのは少し小さめの紙切れ、その紙切れを開いてみると文字が書かれていた




力を、開放してみよ




「力……?」



何の事だか分からなく紙をじっと見つめていると紙の文字が変わった



「っ!!」



己の内に秘めたる力を解き放て



「さっきから、力って何の事なの?」



そう問いかけ紙を見つめてみたがやがて文字は消え、白紙になってしまった



「き、消えた…。どうしたらいいわけ?力を解き放つって言ったって…」



紙に書いてあったことの意味が分からずあたりを見回してみると、少し遠くに大きな岩を見つけた。



「力って、そういう事…?」



岩の方へ向かい、目の前の大きな岩を見上げる。



「ものは試し……」


「はっ!!」



ドゴォン!!!



「………………え?」



怜が岩に向かい拳を突き出すと、触れぬ間にその岩が跡形も無く粉々になってしまった。



「え、え…ぇぇえええええ!?」



ありえないような出来事に叫び声をあげてしまう。



「い、岩がっ!あんなに大きな岩が……!」


「い、いや、いやいや……何かの偶然ってのもあるし…!」



そう言い違う岩にも拳を向ける



「はっ!!」



ドゴォン!!!



またも岩は拳が触れる前に粉々に崩れてしまう



「ど、どうなってるの?手、触れてすらない……」


「いやぁ、おめえ女なのにすげぇなあ!!」


「本当にね、なんでこんなにすごいの……えっ?」


「おっす!」



崩れた岩を見つめながらこの力の原因を考えていると、何者かに声をかけられ驚き振り向く



「え……えっと、あなたは?」



私に話しかけてきたのは山吹色の道着のような物を身にまとった青年、青年は爽やかな笑顔で私に笑いかけた。



「ああ!わりぃわりぃ、おめえがあんまりすげえもんだからよ〜」


「は、はぁ……」


「オラ、孫悟空ってんだ!よろしくな!おめえ、名前なんてんだ?」


「あっ……私は夜刀神 怜です。よ、よろしくお願いします…」


「怜ってんか!いい名前だな!ところでよ、怜、おめえどっから来たんだ?」


「え?」


「オラは結構長い事ここらに住んでんだけどよ、おめえの事見た事ねえからな、旅でもしてんのか?」


「そういうわけでは……」


「じゃあなんなんだ?」


「そ、その……」



怜はこれまでにあった事、元の世界の事、ここの世界について無知だという事を悟空に話した。



「ぃい!?じゃあおめえこの世界のやつじゃねえんか!」


「まあ、そういう事に……」


「そりゃ大変だよなあ……帰る家もねえんだろ?」


「はい…」


「う〜ん……。怜、おめえオラんち来っか?」



悟空さんは少し考えるような素振りをしてそう言った



「え?いやいや!会ったばっかりなのにそんな……」


「でもよぉ、おめえ家がねえんだろ?野宿でもするんか?」


「な、なんとか……」


「でも金もねえんだろ?」


「うっ、それは……」


「おまけにこの世界の事なーんも分かんねえんだろ?」


「うっ…………」



全て当たっていることを言われてしまい黙り込んでしまう。



「な?やっぱオラんち来いよ」


「う、ぅう〜〜〜…………」



確かにお金はないし働く宛もない。野宿するにもできない…。


ならせめて働き先が見つかるまで悟空さんの優しさに甘えさせてもらうしか…。



「あ、あの……」


「ん?なんだ?」


「少しの間だけ…お世話になってもいいですか……」


「ああ!!オラ全然かまわねえぞ!」


「本当にごめんなさい、今日あったばかりなのに……」


「んなこた気にすんな!オラ怜の事気に入ったからよ!」



元気な笑顔でそう言う悟空さんはとても楽しそうで辛かった事も無かった事にしてくれるよう



「あ、私家事はできるので、それはやらせてください」


「本当か!家の事は悟飯が全部やってっからすげぇ助かるぞ!」



ごはん?ごはんって、白いごはんのこと……?



「いやぁ〜悟飯も喜ぶだろうなぁ」



も、もしかして悟空さんって少し頭がおかしい人なの……!



「よし!じゃあさっそくけぇるか!!」


「えっ?あっはい!」



ぎゅっ



「えっ」



悟空さんがそっと私の手を握る



「あ、あの……手」


「ああ、瞬間移動すっからよ、じゃあ行くぞ」



シュンッ



「えっ?」



目の前の景色が一瞬で変わり、怜の前には少し小さな家が現れた。



「ここがオラんちだ!」


「い、今……なにが……」



一瞬の出来事に頭がついていかない…



「ほら、怜、早く中入るぞ」



はっとし視線を移すとドアの前に立ち手招きをしている悟空さん。



「あっす、すみません……今行きます」



そう言い悟空さんの元へ行く



「(さっきの事は後で詳しく教えてもらおう……)」





そうして孫家での居候生活が始まった……(?)

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