短編

□初恋
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「キャー!トランクス先輩よ!素敵!!」


「あーん悟天くんも超かっこいい〜!!」


「やだぁ!!こっち向いた!!!!」


「キャー!!なんであんなに素敵なの〜!!!」



朝からキャーキャーと騒がしい女子。


その女子の視線を集めている人物は2人。




1人は私の一つ上の学年で生徒会長のトランクス先輩。


成績優秀。顔も良ければ性格も良しと非の打ち所がないような人。



そしてもう1人。私と同じクラスの孫悟天。


成績は良いとは言えないが甘いルックスに優しい性格と女子受けするような話術を持つ人。そして私の幼馴染。



私からすれば悟天くんはただの女たらしにしか見えない。


全く何が良いのか分からないって感じ。


悟天くんが教室に入ってくると更に煩くなる女子達。



「きゃー悟天くん!おはよう〜!」



周りにハートを巻き散らせてるかのようにブリブリと悟天くんへと近付いていく女子達。


全く……HRまでまだ40分もあるのに最悪。


私はソサクサと教室を出て生徒会室へと逃げ込んだ。


何故生徒会室かって?


私は生徒会書記をやっているから生徒会室が一番いて不自然じゃないし、この時間だと生徒会室は誰もいないから。



「全く、何が悟天くぅん!よ気持ち悪いったらありゃしない。

私はあんなのと隣の席なおかげて毎日毎日鳥肌立てて生きてるのよ……!

何が「怜は可愛いよね」よ!馬鹿にしてるとしか思えない!

なんなのよあの人すぐに人の手を握ってきて!

幼馴染みだからって馴れ馴れしくしないでほしいわ!

その手で何人の女を抱いたんですか〜??

全く腹が立つわ!皆がみんなあなたを好きな訳ないでしょっ!」



プリプリと怒り悟天への愚痴を零す。



「ははっ、悟天の奴もそんな風に思われる事があるんだ」



1人だと思っていた空間にいきなり自分以外の声が聞こえ、パッとそちらに目を向ける。


振り向いたそこにいたのはトランクス先輩だった。



「せ、生徒会長……!」


「ごめんごめん、盗み聞きするつもりはなかったんだけど、奥で資料を片付けていたら盛大な愚痴が聞こえてきてしまったから」



ははっ、とこらえきれないとでも言うように笑い出すトランクス先輩。



「あ、あの……このことは、悟天くんには……」


「大丈夫、言ったら悟天のやつ泣きわめきそうだからね

君の事大分気に入っているようだったんだよ」


「そ、そうですか……」



トランクス先輩がこんなに笑っているのは初めて見るもので、なんだか話しにくい。


まあそもそも日頃から話す事なんてないのだが……。



「怜さんってそうな風に感情を顕にする事があったんだ。

生徒会の時もいつも静かにたんたんと作業をするからそういう性格なのかと思っていたよ」



ニコニコと微笑みながら話すトランクス先輩。


この人、こんな表情もするんだ……。


チクッ


あ、なんだか胸の奥が痛い。なんだろう。


グッと胸を押え付けるも胸の痛みは取れない。



「大丈夫?」



そっと顔をのぞきこまれ、ハッとする。



「あっ、はい。大丈夫です、すみません。

あ、そろそろ時間ですね。

失礼します。」



軽く頭を下げて生徒会室から出る。


この胸の痛みはなんだろう?
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