短編

□両片想い
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「あ、そういえば今日告白された」


「は?告白された?」



幼馴染みの彼に呼ばれ家へとお邪魔し今日あった出来事を話していると、どうやら私が告白された事が気になったらしく本を読む手を止めてこちらを見てきた。



「うん、そうだよ。今日。」


「またかよ、で?誰なの」



あなたにまたって言われるのはどうかと思うんだけどなあ……



「トランクスと同じクラスの作田くん」


「はあ!?あいつが?怜に告白??」


「うん、彼女いそうなのにね、顔も頭も良いし、トランクスより良い男なんじゃない?」



スマホをいじりながら適当に言葉を返す。


トランクスより良い男がいるなんて思った事もないけど、この人は私が長年想いを寄せてるなんて気付きもしないんだろう。



「怜はあいつと付き合うの?」


「え?なんで?」


「だって顔も頭も良くて俺よりも良い男なんだろ?」



なんだこいつは、確実に拗ねている。自分より良い男がいないと思っているのか……


冗談のつもりだったが間に受けたらしい。



「さあね、付き合っちゃうかもなあ。

返事まだしてないし明日にでも付き合っちゃう?」


「あっそ」


「つまんないやつー」



かまかけてみたのに素っ気なく返され、私に背を向けまた本を読み出すトランクス、全くなんで私の前だとこうもコロコロ変わるんだか。



「トランクス」



後ろから手をまわし顔を覗き込む。



「うわぁあ!?

な、なんなんだよいきなり!!」



こちらを見るなり顔をゆでダコのようにしてバッと離れられる。私ってそんなに嫌われてるのかな……



「そんなに怒らなくてもいいでしょ、トランクスが拗ねるからやったんじゃない」


「拗ねてなんかっ」


「私が作田くんの方が良い男とか言ったから拗ねてるんでしょ」


「そんな訳ないだろ!てか、あいつも怜なんかに告白なんてありえないな、こんな羞恥心もなくて頭も良くない女……!!」


「何よ、そっちだって学校で猫被ってるじゃない。そんな言い方ないでしょ、酷い」



自分から呼んどいて人の悪口を言うなんてまったくなんて人だ。ましてや好きな人にそんな事言われるなんて、傷付かない訳がない。



「帰る。じゃあね、生徒会長サマ」



ふん、と言って部屋から出ようとすると腕を掴まれ進めない。



「何よ、帰れないでしょ。離してよ。」



ぎゅっと腕を掴み俯き黙り込むトランクス。



「痛い。もう、なんなの?」



ずっと俯いて顔を見せないものだから下から覗き込んで見ると、今にも人を殺しそうな顔で眉を寄せている。



「ちょ、ちょっと。どうしたのよ、なんか今日変よトランクス。」


「お……お前が……」


「な、なによ……」


「お前が悪いんだろ……!!」



いきなり顔をあげそう叫ばれる。私が悪いと……なんで私が怒られるのか全く分からない、なんて奴なんだこの我侭ボーイは。



「怜が作田なんかと付き合うなんて言い出すから!!」


「は、はあ!?

なんなのよあんたは!」



全くおかしな事をわめく人だ、全く興味なさそうにしてたくせになんの気の変わりようだ。



「どうせ俺の事なんか眼中に入れてないんだろ!

俺の気持ちも知らないで……!」



いやむしろ眼中に入れまくってたわよなんて叫べず。



「ちょっと……何なのよさっきから

トランクスの気持ちなんて読めるわけないじゃない」


「俺はガキの頃からずっと怜以外見てなかったのに……」



ぎゅっと拳を握りしめそう呟く。


えっと……もしかして私は今この幼馴染みに愛の告白をされているんじゃないか……



「えっ……」



気付くと同時に顔に熱が集まる。



「ちょ、見ないでよ」


「怜……なんでそんな顔……」


「い、いきなりそんな事言われたら誰でも恥ずかしくなるでしょ!!

あんたバカなんじゃないの!?」



真っ赤な顔を手で覆いそう叫ぶ。すると後ろからぎゅっと抱きしめられる。



「なっ、何よ!?」


「ねえ怜」


「な、何……!!」


「もしかして怜も俺の事好きなの?」



耳元で話されさらに顔が熱くなる。なんて事を聞くんだこの男は。



「俺はずっと怜の事が好き。怜は?聞かせてよ」


「な、なんでそんな事聞くのよ……」


「聞きたいから、ねえ」



ぐっと体を反転させられ目の前にトランクスの顔が現れる。



「あっ、えっ、そのっ……」



緊張で言葉が出てこない。相手に気持ちを伝える事がこんなにも緊張する事だとは思わなかった。



「わ、私っ……ずっとトランクスの事が、そのっ、す、す……」


「す?」


「好き、なの……トランクスが」



絞り出すように言葉を放つと唇に柔らかく温かい感触。目の前にはトランクスの顔。私は今、キスされているのか……?


スッと顔が離れトランクスが頬を染める。



「俺も、ずっと怜の事が好きだった」


「えっ、い、今……キ、キス……っ」



状況を理解してさらに顔が熱くなりボンっと赤く染まる。



「顔赤くなりすぎ。

これからよろしくね、怜」



そっと頭を撫で微笑むトランクス、その笑顔にまたキュンとする。


ずっと片想いだと思ってた人と、今日結ばれた。


初恋は実らないなんて、嘘だったのね。

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