Spring rain
□00.はじまりの物語
1ページ/1ページ
「いつも姉上ばかり‥‥
私はいつになればお城へ行けるのでしょうか‥‥厳しい訓練も耐えているのに。何故父上は‥‥
私も殿のお役に立ちとうございます。」
「ごめんね‥‥あのね」
涙ぐむ妹にどんな言葉をかけてやれば
いいのかと困っていると
遠くから自分の名を呼ぶ
父の声が聞こえてくる。
「‥‥困らせてごめんなさい。
先程の言葉は戯言に過ぎません。
姉上、父上の手伝い頑張ってくださいね!」
そう言って微笑み
名無しさんの背を押す
同じ顔の彼女が
名無しさんの心にとても重くのしかかる。
“私も殿のお役に立ちとうございます‥‥。”
先程のあれは決して戯言ではない事は
自分がよくわかっていた。
だから名無しさんは立ち止まり
振り返った。
同情だったのかもしれない‥‥
口からでたその言葉に
目の前の彼女が少しでも
笑ってくれたらいい、と思った。
「今日だけ名無しさんを交換しよっか!」