茜色の空に願ふ
□ここはどこ?
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完全に目が覚めたのだろう。
飛び起きるなり、すみれは衿をかき合わせて壁に張り付いた。
肩をゆるく滑る黒髪。乳白色のほおは蒼くなったり、赧くなったりしている。桜色の唇は小刻みに震えていた。
「あの……私に……なにかしたんですか?」
「案ずるな。めまいを起こして卒倒したゆえ、寝所に運んだまで」
そう答えてから、俺は問いの本当の意味に気がついた。
その途端、こちらも赧くなった。
俺は根っからの朴念仁だ。そんな盛大な勘違いをされては反応に困る。
「ま、まて! 何もしておらぬ。指一本触れては……いや、抱き上げた時に触れたが……あ、そういう意味ではなく……」
弁解すればするほど泥沼である。
すみれの端正な顔立ちがいよいよ曇っていく。
とにかく落ち着かせねば……と思い、俺が近寄ると、悲鳴が上がった。
「近寄らないでください。いやぁ!」