鬼娘


□鬼と万事屋
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「銀時殿?あの、待って下され!」

真選組を出てから何度かこうして銀時に声をかけているが、銀時はシグレの手を引きながらずんずんと前を歩いたまま振り返らない

「銀時殿っ!!」

白鬼の子孫である銀時相手に力づくで振りほどくことはしたく無かったが、
仕方なく振りほどいた

「なんで、いきなりあんな事を……?」

「………」

銀時は暫くシグレに背を向けて黙ったままだったが、ふっと振り返った

「お前、俺を……白鬼を探すためにあいつらの所にいたんだろ?

俺が見つかったなら、あいつらのところにいる必要もないだろ?

だったら万事屋に来て

俺のそばにいろよ」

銀時のその言葉にシグレは頭の中で納得する

だがどうしても心がざわざわとして落ち着かない

そこで真選組の事が頭に浮かぶ

人間臭いというよりもどちらかといえば獣臭い局長殿は自分のことをよく見てくれているいい人だ

タバコの匂いがいつまでたっても離れない副長殿は厳しいが僕や他の隊士達にも気遣いが出来る、見た目にそぐわぬ繊細な人だ

なんの匂いもせず、真選組に入ってすぐに仲良くなった山崎はとても人当たりがよくなんでも話しやすい相手だった




そして沖田総悟




総悟は僕の封印を解いてくれた人間で、鬼の血を引いた男だった

突然人間に囲まれるようになった生活の中で総悟がいてくれることはとてもありがたかった

副長殿は総悟は本当はこんなに面倒見のいい奴じゃないと言っていたが、そんなことはないと思うんだ

確かに僕の記憶と思われる夢を見て、それをからかったりすることはあったが、全てが悪意だけで構成されたイタズラではないのが分かる

あの瞳が、忘れられない

銀時殿と同じ赤い瞳だが、眼の形や妙に気怠そうなあの瞳がシロのものに見えて仕方がない

瞳がシロに似ているから、こんなに恋しいと思うのだろうか

目の前にシロの子孫である銀時殿がいるのに、なぜこんな気持ちになるのだろう

「着いたぞ」

そんな事を考えているうちに
万事屋の前まで来てしまった

「あの、でもやっぱり……」

「あいつらの所にいたから、あいつらが恋しいと思うんだよ

万事屋に来たらきっと、こっちだって悪くないって思うさ」

まるでシグレの心を見透かしたような言葉を吐く銀時にシグレは目を丸くする

真選組にしばらくいたからこんな気持ちになるのなら、万事屋にいれば違うのだろうか……?




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