貴方の声がする方へ

□お土産もドーナツ
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「ハク、いる?」



陽気な昼下がり、真選組屯所の門を叩いたのは意外すぎる人物だった













「き、局長、副長!
見廻組副長の今井信女が門に来てます」

「「はぁ!?」」

思い出すのは鉄を預かってすぐの頃、見廻組と大ゲンカしたときのことである

近藤に暗殺剣の使い手とまで言わしめ、沖田とも対等に渡り合った今井信女の存在を土方も知らないはずはなかった

「………用件はなんだ」

「それが、その……」

門番は言いにくそうな顔をしながら、俺の後ろに座っているハクにチラリと目を向ける

「ハクはいるかって」

「こいつを真選組によこした見廻組の奴が何の用だってんだよ、入れるな」

「それが……」

門番はまた言い淀むと、次は書状を取り出した

【見廻組副長今井信女を真選組屯所内に入れる事を許可

警察庁長官 松平片栗虎

P.S.入れなかった場合は真選組を解体するからそのつもりで】

「んだこのふざけた書状は……」

「でも松平公の直筆に間違いありません、どうしますか?」

「チ……
とりあえず俺と近藤さんが話す
総悟には言うな揉めたら面倒だ

ハク、お前はここでそのまま仕事してろ」

「分かった」

俺と近藤さんは部屋を出て今井信女の待つ客間へ向かった
















「えっとその、見廻組の副長さんがうちに何の用で?」

近藤さんが恐る恐る話しかける

「別に、私は真選組に用があるんじゃないわ
ハクに会わせて欲しいだけ」

「オイ、
俺たちはロクにハクの事を知りもしねぇんだ
急に見廻組の奴が訪ねて来たとなりゃすんなり行かねぇのはわかってんだろ
俺たちが納得するような理由があるのか?」

今井信女は暫く考えるようにしてから答えた

「私は記憶を消される前のハクを知ってるわ」

「な……」

「あの人にとって一番長い記憶
一度も消されることのなかった3年間も、その前も、その前も、私は知ってるの」

「3年……だと?
じゃあそれ以外は3年以内に記憶を消されてるってのか!?」

「私がハクと初めて会ったのは13年前、私が5歳でハクが7歳の頃
初めて記憶を消されたのは9歳の時
そこから何度、ハクが記憶を消されたかなんて分からないわ」

10にもならない頃からそんな状態で、何度も記憶を消されたのかと思うと吐き気がする

「……ハクちゃんと君の関係は……?」

「…………」

今井信女はじっと近藤さんの目を見つめたまま、ゆっくりと口を開いた

「姉妹よ」

「え、そうなの!?顔とかあんまり似てないけど………」

「血は繋がってないわ
それでも、ハクは私の姉で、私はハクの妹なのよ」

真っ直ぐ近藤さんを見つめるその目には、話に聞いていたような残忍さは微塵も感じられず、むしろ懇願しているようにも見える

「…………

トシ、会わせてやっていいんじゃないか?彼女、嘘はついてないよ」

俺もそう思う

が、

「2人きりで会わせてやるわけにはいかねぇ
うちの山崎が屋根裏から監視して会話を全て記録する
それでもいいなら会ってもいい」

「な、トシ……」

「分かった」





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