詩
□声
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少女は声が綺麗だった。
人々は皆、それに聞き惚れた。
少女は声が綺麗だった。
初対面のものは皆、それに驚き固まった。
少女は声が綺麗だった。
それは春の柔らかい陽射しのような、
秋の優しい涼しさのようなものだった。
少女は己が声が嫌いだった。
作った声だったからだ。
少女は人々が嫌いだった。
少女の"偽り"を好きだと言ったからだ。
少女は己が嫌いだった。
"偽り"と共に生きているからだ。
少女は声を出した。
本当の声を。
それは夏の照り付ける陽射しのような、
冬の突き刺す寒さのようなものだった。
人々は言った。
その声は汚いと。
人々は言った。
その声は怖いと。
人々は言った。
元の声に戻ってほしい、と。
少女はもう声を発さなかった。
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