おたから図書館

□春咲きフリージア
1ページ/3ページ

自分はどうかしてる。
レビィは自分の感情に気づいてからというもの、何度かそれを訂正すべく努力を試みた。
もう考えないようにしよう。
だからあっちの方を見ない・・・・・・見ない。
本に集中・・・・・・集中。
気にしない・・・・・・気にしない。

「・・・ちゃん」
「・・・・・・」
「・・・ちゃん?」
「・・・・・・」
「ねぇ、レビィちゃんてば?」
「えっ?なに?」
何度声をかけても無反応のレビィの腕を、たまらずルーシィがつかんだ。

「どうしたの?」
「・・・ごめん。ちょっと本に集中してて」
「うそ」
「え?」
「だって、その本逆さまだよ?」
「あ」
レビィが真っ赤になったのは嘘がバレたせいではない。
嘘をついてしまった理由が明白だからだ。

「考えごと?」
「う、うん」
「悩み事?」
「こ、今晩何食べるのかなぁって」
「誰が?」
言い訳の主語すらおかしくなるほど、レビィの頭の中は他のことでいっぱいだった。

「あ、わ、わたしだよ」
「ほんとにぃ?」
「う、うん。たまには家で食べようかな」
意味ありげにルーシィに顔をのぞきこまれて、レビィは思わず視線をそらした。

言い訳の主語となる人物は、ギルドの長テーブルの一画を陣取り、ナツやグレイと何やらののしり合いながらガジガジと鉄を食んでいる。
その男、黒鉄の滅竜魔導士、ガジル・レッドフォックス。

レビィ(やジェット、ドロイ)と最悪の出会いをした後、いろいろあって・・・ナツに負けたガジルは『妖精の尻尾』にやってきた。
仕事が欲しかったからだと主張していたものの、相当の覚悟があってやってきたのは誰の目にも明らかだった。
わざわざかつての敵のギルドへ、誰が仕事をもらうためだけにやってくるというのか。
しかし、そんなガジルという人間の一端を知ることができたのは、ラクサスの起こしたバトル オブ フェアリーテイルから。
レビィが解いた術式のおかげもあって、ナツと共闘をすることになったガジルは、徐々にみんなと話をするようになっていた。
その様子を見るにつけ、胸の奥がじーんと熱くなるのはなぜなんだろうかと、レビィは一人思い悩んでいたのだ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ