サンシャイン★ドリーム

□ハロウィンヘッド
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「清陽さん、どうですか?」

淡いピンクのワンピースにナースキャップ、シンプルな紺のカーディガン。大きめの玩具の注射器を持って腰に手を当てポーズをとる。

「お、ナースいいじゃん。エロくねーしハロウィンパーティー用にしてはシンプル過ぎる気もするけど」

「エロくないは余計です…」

私は少し唇をとがらせ、ゆっくり近付きカーディガンに手をかけるとバッと胸元を開いて血で真っ赤に染まった心臓部を見せた。

「うおっ!」

「トリックオアトリート!ビックリしました?死人ナースコスです。ふふっ血糊を使ってみました」

ハロウィンだし悪戯しちゃった。

普段はいつも私が清陽さんにからかわれたり驚かされてばっかりだから、やり返せたみたいでちょっと嬉しい。

「なんてな。バーカ、真実子が考えそうな事ぐらいお見通しだっつの。その血糊赤過ぎだし」

「えー?完璧にドッキリさせたと思ったのに!」

「真実子ごときが俺を騙そうなんて甘い。ま、そのいかにも素人が頑張りましたっていう血糊具合はなかなか自然で良いんじゃね?」

「…そんな誉められかた嬉しくないです…」

むくれる私に清陽さんは鏡越しに笑いながらドラキュラの鋭い歯を口内に嵌め込んで、黒蝙蝠みたいな長いマントをばさりと羽織った。

う、シンプルでいてカッコいい…。悔しいから言わないけどっ!



因みにこれはプライベートで楽しんでいる訳ではなく、私たちはこれからクラブのハロウィンパーティーに潜入捜査する予定になっている。

今夜の人の多いイベントに紛れ、クラブのバックヤードに忍び込んで盗聴器と隠しカメラを仕掛けるのが目的で、まだ潜入捜査に慣れていない私の練習でもあるのだ。

「真実子いいか?潜入捜査の基本は、原則目立たないようにする事と風景に馴染むことだ」

クラブに潜入する前、清陽さんが真剣にアドバイスをくれる。意地悪だけど何だかんだ面倒見いいんだよね。

「はい!」

「後は、不意なハプニングが起こっても冷静でいること。わかったな?」

「は、はい…!」

うう…少し不安になってきた。ううん清陽さんも居るし大丈夫なはず!

「じゃあ今からは何が起こっても驚いたり叫んだり動揺したりすんなよ?もし約束破ったら、後で…お仕置きな?」

清陽さんが尖った歯で妖しくニヤリと笑う。ぐっと腰を抱かれ、いきなり顔を近づけてきた。

「……!…お、驚いてませんよ…そういうのは慣れましたっ」

「…ふーん?つまんねーの」

ドキドキする血だらけの心臓を必死で抑え、清陽さんからふいっと顔を逸らして距離を取る。

もう、いっつもからかって来るんだから…。

顔赤くなってないよね…大丈夫だよね?私はそっと夜風に晒された頬を軽く手で覆い隠した。





「やべ、俺ちょい寒気してきた。風邪引いたかも…ゴホ…ゴホン…」

軽く背を曲げて、清陽さんが不意に咳き込む。

「え、大丈夫ですか?」

心配になって近付き背中を撫でようとしたその時…

突然、清陽さんの頭が首から外れガクンと落ちた!

「きゃああああああああ!!」

私は驚いてその場に尻餅をつく。

腹部辺りで止まった頭部と視線が合うと、それはニコッと笑いオレンジ色の頭はするすると元の位置に戻る。

「…な、な…なななな…!」

「くっ、すっげー顔。Trick or Treat!」

「…き、清陽さんのバカ!…本気の宴会芸を仕込まないで下さいっ!」

涙目になりながら訴える。





ハロウィンの夜の潜入捜査は見事失敗に終わった。

***


「つか潜入前にマジで腰抜かすとかないわ…」

「誰のせいなんですか!?清陽さんは手加減ってものを覚えて下さい…!!」
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