サンシャイン★ドリーム
□少年
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真実子のハンマーの一撃がドラゴンの頭をぶち抜く。それがとどめとなってモンスターが雪山に沈んだ。
「やったー!わたしの勝ちです!」
「げ、マジかよ…」
こいつマジでモンモンハンター上手くなりやがったな…最初は真正面からモンスターに突っ込んでは早々に3乙してたのに。
ゲーム機のコントローラーを置いて、真実子が罰ゲームの籤が入った箱を両手で持ちカサカサと中身を揺すって俺の顔面にずいっと突き出した。
籤の中身は各自で入れた恥ずかしい質問だったり無茶振りの行動だったり、結構きわどい事も書いて入れちまったから引くの嫌なんだけど。
真実子に罰ゲームさせるのが面白いんだっての。
溜息混じりに自分の書いた籤を引かないように願って紙を一枚抜いた。
「何がでました?」
いつもは自分ばかり罰ゲームさせられてるからか、真実子が楽しそうに手元を覗き込んで来る。
「……『小さい頃の夢は?』」
「あ、それ私が書いたやつです」
「小さい頃の夢?……そんなの忘れたって。真実子は確かお姫様だっけ?ハハッおまえ夢見すぎ」
「小さい子供の夢なんだから別に良いじゃないですかっ…!」
ニヤリとからかい混じりに笑うと、真実子が恥ずかしそうに頬を染めて慌てる。ふ、可愛い。
「ほらほらほら、話を逸らそうとしたってダメですよ!……嘘も無しですからね?」
クソこいつ。最近あんま誤魔化されなくなってきてんな。
「@探偵 A正義のヒーロー B宇宙飛行士。
どれでしょうか?」
突然の三択に真実子がきょとんとする。
暫く黙って考えてから、じっと俺を見あげ口を開いた。
「正義のヒーロー…じゃないですか?」
うわ、こいつ当てやがった…。Bっぽい流れにしようと思ったのに。
正直驚いた。
俺はこいつに嘘をついてばかりだったし性格も捻くれている自覚があるからだ。
「よくわかったな。俺もガキの頃は今より素直だったんだよ。ま、正義のヒーローとはかけ離れた人生しか歩んで来てねぇけど」
「そうですか?私にとって清陽さんは正義のヒーローですよ?」
「……どこがだよ。お前、俺に騙されてばっかりだったの忘れたの?」
「忘れてません…けど。本当にピンチの時に助けてくれたのは、いつも清陽さんだったので」
真実子が優しく笑う。
ぎゅっと胸が締め付けられて、すげー痛い。無意識に視線を外す。頬が熱くなりそうな感覚を誤魔化すように言葉を続けた。
「アホ、お人好し。そんなんだから俺なんかに付け込まれんだよ」
腕を伸ばし真実子の頭をぐしゃぐしゃにしてやったら、きゃーきゃー喚いて抵抗してくる。
更に脇腹を本気で擽ってやる。怒ったり、笑ったり、刃向かったり、やり返されたり、やっぱり笑ったり俺達は忙しい。
正義のヒーローになりたい。
なんて、それは俺が両親やたくさんの周りの人に守られて何不自由なく育ってきた証拠なのだろう。
世間ってモノを知れば知るほど、それがいかにガキ臭い夢かって事に気づかされたのは15歳の時だった。
現実を嫌ってほど突きつけられた時、ただの俺は本当に無知で無力だった。
正しくない選択も沢山した。
忘れたい過去も後悔も、無駄にした時間もいっぱいある。
俺は正義のヒーローなんかじゃなかったし、こいつもどうやらお姫さまにはなれなかったようだ。
……こんなに可愛いのにな。
真実子を強く抱きしめる。
突然の俺の行動に真実子が驚いて少しずつ大人しくなる。
そうだろうな。お前にはまだわかんねーだろ?
でも真実子の正義のヒーローになれたみたいに、俺も一人くらいならお姫様にしてやれるかもしれない。
いつだって大切な事ほど言葉にできない。
逃げ出したくなるほど少年だった過去をしっかりと抱きしめ直すよう
腕の中で戸惑う柔らかい身体に、全力で甘えた。