サンシャイン★ドリーム

□rosy face
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「わぁっ綺麗ですね…!銀座にこんな素敵な空中庭園ができてるなんて知りませんでした」

所長から調査結果の連絡が来るまで少し待機時間が出来たので、近隣ビルの屋上で開催されているオータムローズガーデンに真実子を連れてきた。

たくさんの薔薇が咲き誇る庭を見つめ真実子の瞳がキラキラと輝く。

花に興味はないけれど、前もって調べておいて良かったな。

空の光が柔らかく差し込むカフェテラス席に案内され、レトロなアイアン製のガーデンチェアをさり気なく後ろに引いてやると

レディファーストに慣れてない真実子の頬が薔薇色に染まった。





薄桃色の薔薇のアーチを背負った真実子はとても可愛い。

黙ってたらどこぞのご令嬢に見えなくもないくらいだ。

「えっと…じゃあ私はローズティーとスコーンのセットで。清陽さんは何にしますか?」

「アールグレイ」

注文を取りに来た店員に手早くオーダーをすませた後、真実子がそわそわし始めて窺うように俺を見てくる。

「あの…写真を撮ってきても良いですか?」

ほらな?言うと思った。

「どーぞ」

笑いそうになるのを仄かに利いたレモン水の入ったグラスで隠しながら答える。

「ありがとうございます!ちょっとだけ行ってきます」

真実子は嬉しそうに大きな鞄から仕事道具のカメラを取り出して席を立った。

フリーカメラマンという仕事をしているだけあって、あいつ本当にカメラが好きなんだな。

移動しながら太陽の方向を確認して位置取り、ファインダー越しに庭園を見つめている。

一眼レフのシャッター音が微かに聞こえる距離から、地面に膝をついてカメラを覗く真実子を眺める。

カメラを構えている時、真実子は色々な顔を見せる。ころころと変わる表情は見ていて飽きない。

薔薇を撮る真実子は微笑んでいた。

自身でも気がついてないくらい柔らかいその笑顔は、薔薇に囲まれて座っている時より綺麗だ。





「清陽さん」

「え?」

「ぼーっとしてどうしちゃったんですか?…わ、このローズティーすごく美味しい」

注文していた紅茶が来た頃合いで真実子がテーブルに戻ってきた。

「ふふっでも少し意外でした。清陽さんお花、好きなんですね」

「は、なんで?別に普通だけど」

真実子の言葉の意味が解らなくて思わず瞬きをする。

「そうですか?でもさっきからずっと笑顔がとても優しいです」

真実子が屈託ない顔で笑う。





……アホ!





それは花じゃなくて…。


思いがけず、俺の頬も薔薇色に染まった。
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