新人がかわいすぎる件

□プロローグ
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辞めてしまった。
考えもなしに仕事を。

友人には珍しいねって言われた。

それもそうか。いつも事が決まってから行動に移す。
何も考えずに…なんて嫌いだ。

あの人達を連想させるから。

辞めたからとは言ってもホストで借金返しながら貯めた貯金は多めにあるしこれだけあれば贅沢をしなければ自分の生活費は勿論、叔母の所の仕送り分も数ヵ月は大丈夫だ。

…はぁ…っ。
こんな気分サイアク。
今日は何故だか気分が沈んでいた。

仕事にやりがいを感じてたのは事実だが借金がなくなり次第辞めると決めていた。

そもそも俺が返す必要のないお金を逃げた両親のせいで払っていた。
…小さい頃からろくに世話もしなかった癖にっ。
仕方ないことだった。



「バアさんの息子夫婦がつくった借金、返せないなら家族の誰かに保険金かけて殺されてもらうか、内臓売ってもらうか。
あとはそうだなー。その赤ん坊マニアに高く買ってもらうとか?」

“あっははっ”と男の笑い声が響く。

「それはどうにか勘弁して下さい。わしがなんとかお金は用意しますから…。」

叔母はそう言って俺と妹を庇ってた。
奴等が来る度に。

「バアさんさ、何回目よ、それ。
カネ用意できないからいつまでも払えないんっしょ?
もうこっちも我慢できないわけよ。」

男はニタニタ不気味な笑みを浮かべながら叔母に言う。

「でもっ、この子はわしにとって大切なっ…」

「そうだよねー、まだそんな歳だしねー。売るのはちょっとって思うよね。じゃあそうだっ!こうしよう。
今年の夏までに借金の35%返せなかったらオタクの高校卒業するお兄ちゃんのほうに身体を売って返してもらうことにするよ。
それまでにお金は用意しといてよ。
こっちは本気だから。」


あの男はそう言って不気味な笑みを浮かべたまま帰って行った。


櫻夜は借金取りが来る度にずっと見ていた。そして
叔母が返す必要のあるお金ではないからと、この時から必死に働き始めた。
過労で死ぬんじゃないかと思うことも何回もあった。
それでも、風邪を引こうが、熱があろうが、怪我をしようが、働いた。
ホストと金になる仕事を掛け持って。
大学に行くのも諦めた。
この時はもう高3の1月だった。
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