新人がかわいすぎる件
□プロローグ
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次の日、また次の日と公園には近づかなかった。
いや、近づく気になれないどころか外にすら出る気にならなかった。
ずっと職探しに雑誌を見ては寝る日々が続いた。
出歩くのは買い出しだけだった。
そんな毎日に飽きがきた。
雑誌を見てもやりたい仕事は見つからず、でも何かやらなきゃと焦りが生まれたまま1週間がたった。
焦りから落ち着かなくて夜も眠りにつけなくなっていた。
…。
眠れない。
時計を見ると22時半を過ぎていた。
少しだけ気分を落ち着けようと公園へ行くことにした。
〜♪
公園に来てはまた唄う。
あれからさらに3日間そんな日が続いていた。
トコトコ
そんな音が後ろから聞こえ彼は驚いて勢いよく振り返る。
「やっと会えた。」
彼、櫻夜が人の姿を発見して怒られる前にと帰ろうとした瞬間だった。そんな言葉が聞こえたのは。
「はっ??」
訳もわからずきょとんとする。
“やっと会えた”?
「君の歌、前に演技の練習にこの公園に来たときに聞いたんだよな。
なんか不思議だけど君となら同じステージに立っている姿を想像できるんだよな、俺達とさ。」
何いってんの?この人
という顔を俺はしていたのだろう。
彼がそっか、説明が必要だったね。そう言ってさらに口を開く。
「俺、夢色カンパニーっていうミュージカル劇団の主宰してるんだけどさ、…」
どうやらその劇団の人とステージに立つのが想像できるとやらで…
君がいればもっと劇団は輝ける。だからうちにこないか?って言われた。
いや、ないない。それはないよ。
「検討違いです。」
確かに歌の仕事は憧れる。だか、無理なことは目に見えていた。
彼は少し説得というか、話しというか…
をしたあとに、じゃあこれを見に来て決めてほしい。
きっと君はステージに立つ姿が似合うからと半ば無理やり紙を受け取らされ
“じゃあ”と彼は帰っていった。
手元を見る。
渡されたその紙はチケットだった。
夢色カンパニー?
ミュージカル?
彼の演技を見て決めろということか…
退屈してた最近、曇りがちだった心が少し晴れてるのを櫻夜は感じた。
「面白いやつ…」
フッと口角が自然にあがった。