BOOK

□最初から
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『大ちゃん、あのね?』
『なぁに?伊野ちゃん』
『俺、大ちゃんの事、好きなの。だから、俺と付き合ってくれる?』
『....うん!』





あの時のウソの様な出来事。
あの時から暫くは、いつもラブラブで。
嬉しかったのに、今の伊野ちゃんはなんだか俺の事なんか見てくれてない気がする。
いっつも、いっつも、知念の事ばっか気にしてる。

「伊野ちゃん、今日さ....」
「ごめん、今日ちょっと用事あるから先帰るね?」
「え、あ...うん!バイバイ!」

ウソつき。
ホントは知念と約束してるんでしょ。
でもね、俺知念の本心知ってるんだよ。
伊野ちゃんの片想いなんだよ。
ねえ、こっち見てよ伊野ちゃん。

「なに〜?いのあり倦怠期なの?」
「っ...違うよ!そんなんじゃないよ!」

薮くんにそんなことを言われて、少し明るく否定していても心のなかでは否定出来ていなかった。
上手く、笑えない。

「...俺も、もう帰るね。バイバイ。」
「あ、待って有岡くん。」

荷物を持って帰ろうとしたら、高木に呼び止められた。
不思議に思って「どうしたの?」と返した。

「一緒に帰ろ。俺、今日車だから送るよ。」
「ホント?ありがと。」

二人揃って、メンバーの皆に別れを告げて楽屋を後にした。
地下の駐車場で高木の車の助手席に座って、暫く窓の外を眺める。
駐車場を出てすぐの信号のところで止まったとき、高木が俺に聞いた。

「最近、伊野尾くんとなんかあった?」
「別に...」

俺はそう答えるのが精一杯だった。
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