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□22時の逃ヒコウ
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突然、なんだか逃げたくなった。

別に、仕事を放棄したい訳じゃない。
ただ最近、大ちゃんに会うことがめっきり減った気がするだけ。

現在夜の21時。

ふと、明日と明後日大ちゃんも俺もまるまるオフだったことに気がつく。
だから、何となく大ちゃんにメッセージを送ってみた。

『今からあえる?』

大ちゃんは暇をしていたのか割りと直ぐに返信が来た。

『あえるよ。伊野ちゃんどうしたの?』

大ちゃんらしい、簡単な、でも人を気遣った返事が来た。

『明日も明後日もオフでしょ?だから今からドライブでもいかない?』

返信が来るまで待っていると10秒後位に返事が届いた。

『良いよ。じゃ迎え来てね!』

了承のメッセージを貰ってワクワク気分で支度をして車に飛び乗った。

現在21時15分。

俺は、大ちゃんの家へ車を飛ばしていた。
車で15分くらい。
大ちゃんは外に立っていた。

「あ、伊野ちゃん!」
「やほ〜。」
「突然、ドライブ行こうなんてどうしたの?」
「ん〜、逃げたいからかな?」

俺の答えに大ちゃんはビックリした顔してた。
まぁ、そうだよね。
突然逃げたいなんて。

「あはは〜、伊野ちゃんも逃げたいって思ったんだ〜。」

助手席で呑気に大ちゃんが笑ってた。

「俺もね、なんか逃げたかったんだ〜。」
「大ちゃんも?」
「うん、なんか嫌なことから逃げたくなっちゃった!」

てへへ〜って笑う大ちゃんが可愛かった。

どこに向かうって訳でもないんだけど、子供の時に夢見てた『好きな子との逃避行』を思い出して好きな子と行きたかった場所に向かい始めた。

「なんか、こんな夜に出掛けるってさ。」
「なに?伊野ちゃん。」
「ロマンチックだけど、悪いことしてるみたいだね。」
「確かに!じゃあ非行かな?」
「そうだね、夜の逃非行。」

現在22時。
俺と俺の愛しの恋人の大ちゃんは嫌なことを忘れるべく、二人で『逃非行』と『逃避行』をしながら
夜の非現実的な世界へと車を走らせた。

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