BOOK

□普通を知らない僕ら
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俺と薮は【普通】を知らない。
いや、知らない訳じゃない。
ただ、普通じゃないだけ。

俺は男である薮の事が好きで、薮に抱かれたいという感情を持っている。
一方の薮は薮で、男である俺の事が好きで、俺を抱きたいという感情を持っている。

元々はお互いに抱いてくれるなら、抱かせてくれるのなら誰でも良かった。
そして俺は薮の気持ちを、薮は俺の気持ちを知ってしまったのだ。

そんな【普通】じゃない俺達がお付き合いをするまではそんなに時間が掛かるものではなかった。
だって俺達は【普通】じゃないから。

「光、ちょっと良い?」

俺が物思いに耽っていると不意に薮が俺を呼んだ。
その薮の顔は、他のメンバーが知らない、俺にしかみせない色っぽい顔をしていた。

「なに?どうしたの??」

その表情にゾクッとしたが、誰にも悟られないように薮の側に近寄った。
すると、薮は俺の手首を掴み誰も居ない楽屋の中へと俺と自信の体を押し込んだ。

「ねぇ...光、今からダメ?」
「...ダメに決まってんだろ...」
「じゃ、えっちは撮影終わったあと俺んちでシよ。」
「...うん。」

ホントは俺だってシたかったけど...。

「じゃあ、代わりに、光のその綺麗な目、舐めさせて?」

【普通】の人が聞いたらビックリするような台詞。
でも、俺達にとってはこれが【普通】。
だから、俺達はいつまで経ってもホントにホントの【普通】を知らないのだ。

俺達は【普通】じゃないから。
俺達は色々な意味で【普通】になれないから。
だから俺達は今日もお互いの【普通】を求めて過ごすのだ。

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