AMNESIA


□ 〜貴女の看病〜トーマ編
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ーどんなこわいことからも
きみはぼくがまもるよー


夢を見た。
幼かった頃の夢。
私と……『トーマ』


「お、目が覚めた?」


私が目を開けると、そこには見馴れた天井。
そして、横にはトーマがいた。


まだ夢の中?
私は起き上がり体を起こすと、視界がぐらりと歪み、体のバランスを崩した。


「こーら。急に起き上がったらダメだろ?熱があるんだから」


トーマは私の体を支えながら言う。
顔が近い……。とっさに顔をトーマから背ける。


「ん?お前、顔赤いね?熱があるからか?……ちょっと待ってな」


私の体をそっと横たえると、
トーマはその場を離れる。


体が熱い。頭もクラクラする。
これは熱のせいだけ?
意識が遠のいていくのがわかる……。


「あ、あったあった」


不意に聞こえたトーマの声で、
私は意識をかろうじて保つ。


「ほら、薬飲んでしばらくすれば楽になるから、起き上がれるか?」


小さく首を降ると、
「仕方ないな」と言ってトーマの腕が私を起き上がらせてくれる。


薬と水の入ったボトルを差し出すトーマ。
けれど、私の意識はどんどんと深いところに落ちていく。


……………。










「おーい?大丈夫?」


高熱で完全に意識を失ったマイ


ふわっとした髪を指で梳く。


「それにしても…。本当にキレイになったよな。こんなに近くにいるのもいつぶりだろう」


オレはマイのことが愛おしくて仕方ない。
けど、マイにとってオレは…。


「なぁ。オレはお前にとって、兄以上にはなれないのか?」


気づいた時にはオレはマイを抱きしめていた。


「オレはお前のことが好きだよ。誰よりも」


オレは意識のないマイの耳元で囁いて、水と薬を口に含んだ。
そのままこいつに口付ける。


『……ごくん』


「でもオレはお前が幸せならそれでいい。…お前が誰を好きになっても」


end
 

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