リクエスト2、羽華編

□暁の大蜘蛛退治
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とある町の中、その中を一人の旅人が歩いていた。
旅人の名前は刹那イオリ、彼女はある人物に会う目的でこの町にやって来たのだ。
コツコツと靴音をさせながら歩き続けていると、人気が全く無くボロボロな廃ビルに到着した。
辺りに人がいないのを確かめると、イオリは懐から巻物を取り出した。
「・・・・・・・。」
イオリはその巻物をジッと見つめるとまた巻物を懐にしまい込み、廃ビルの中へと入っていった。
するとそこには、ブクブクと太った中年女性が悲しい顔をして階段に腰をかけていた。
この女性は河津チェリー、かつては美しい少女の皮を被って願いを餌にし人を食らう恐ろしい蜘蛛の怪物であった。
が、少し前にやって来たイオリに懲らしめられ力を奪われたあげく今の姿に変えられたのである。
イオリはそのチェリーに近づくと、声をかけた。
「よう、久しぶりだな。元気にしてたか?」
その声にハッとして、チェリーはイオリの方を見た。
「あ、あなたは!」
「反省したか?」
「は、反省しました!お願いです、元に戻してください!」
そうイオリに訴えるチェリー。
しかしイオリはパパッと印を結ぶと、チェリーの唇にソッと触れた。
すると・・・
「反省なんてするわけないでしょ!元に戻ったらまずあんたを喰って、それから私を馬鹿にして笑った奴らを喰ってやるわ!」
チェリーの口が自然に動きだし、先ほどまでの反省の言葉とは違う言葉をペラペラと話し出した。
チェリーは慌てて口を手で押さえたが時すでに遅し、イオリはその場から立ち去ろうとした。
その時である!
チェリーがピョンッとイオリに飛びかかってきた。
「お、おい!何するんだ!」
そう叫びながらチェリーを引き剥がそうとするイオリだが、チェリーはイオリに組みついたまま全く離れない。
そうしながら壮絶な取っ組み合いを演じていると、イオリの懐から巻物がポロッと落ちた。
「しまった!」
慌てて巻物を拾い上げようとするイオリ、だがその巻物をチェリーが拾った。
イオリはオカリナを鞭に変化させると急いで奪い返そうとしたが、チェリーは巻物を広げた。
するとその煙からボワッと大量の煙が出てきて、あっという間にチェリーの全身を包み込んでしまった。
そして少しして煙が晴れると巻物は灰となって消えうせ・・・・・・・あとには元の美少女に戻ったチェリーの姿が残った。
「くそっ!」
咄嗟にオカリナを大鉈に変え、チェリーに攻撃を仕掛けようとするイオリ。
だがチェリーはそんなイオリの隙をついて一気に近寄ると、イオリの首に強い毒を持った自身の牙をズンッとつきたてた。
「う・・・ぐっ!」
今まで味わった事のない毒を喰らったイオリはスッと意識を失ってしまい、チェリーはそんなイオリを抱えると姿を消した。
しかし、彼女は気がついていなかった。
イオリの相棒であるルルがこっそりとイオリから分離していた事に。
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