17歳の悪魔
□10 シゴト
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翌日、俺は家に帰るとちゃんとそこで一夜を過ごしていた様子の彼女に、複数の雑誌を机に広げた。
俺は1日頭を冷やして2つのことを決意した。
まず、ふぶきに健全な方法で生活費を稼がせることだ。
売春は犯罪であり、つまりどうあってもあのバイトは辞めさせなければならない。
そしてもう1つ。
最後までふぶきのことに責任を持つことだ。
俺はどのような過程であれ彼女とああいう干渉の仕方をしてしまった。
そのことは否定する余地がなく、逃れようのない事実だ。
だからこそふぶきの本性を知った今でも、彼女の助けにならなくてはならないと感じた。
それにおそらく1番の解決策は警察に保護してもらうことだろうが、彼女には謎が多い。
そのことも俺は気がかりで、彼女が本心から捻くれてしまったようには思えないのだ。
できることならそんな彼女の心も救ってやりたい。
そう考えて、まず彼女を正式なバイトで働かせることが大事だというところに行き着いた。
そこで俺はコンビニに立ち寄って、いくつかのバイト情報誌を買ってきたのだ。
「なにこれ。」
彼女は頬杖をついてそれを冷ややかに見下ろす。
「バイト情報誌だ。そこから、良さげなものを探すといい。」
「ふーん。」
それを手に取ると、ふぶきはあまり興味なさそうにパラパラとめくる。
「…お前は高校1年生の時からあのバイトを始めたと言っていたな。」
その様子に俺は話題を切り出すも、彼女は視線を落としたまま生返事をした。
「うん。」
「いきなりそのバイトを始めたのか?それ以前に別のバイトをしていたことはないのか。」
「そりゃああるよ。」
「どんなものをしていたんだ。」
彼女は相変わらず三つ編みにおそらく伊達であろうメガネをかけており、本性を晒した後でもそのスタイルを崩すつもりはないようだった。
「別に普通だよ。飲食店とかそんなとこ。」
「なんだ、真面目にしていたこともあったのか。」
どのようにしてあんなバイトを知ったのだろうか。
それこそ始めは騙されでもしたのだろうかと思うも、これはやや込み入った話になってしまうので自身の中に留めておいた。
「よくて時給1000円くらいか〜。セックスするだけで5万はもらえるのにな〜。」
「…そういう言葉は慎め。」
そう言うと彼女ははっと笑った。
「アハ、そんな純情ぶる歳でもないでしょ。」
ふぶきは邪な瞳を寄越すと、また雑誌に目を落とした。
「でも高校生ってなるとやっぱあんまりないのよね。あ〜あ、効率悪ぅい。」
ふぅとため息をつく彼女に俺はふとした疑問を抱く。
「ふぶき、以前お前は実家が嫌だと言っていたな。それで神奈川に出てきたのか。」
「うん?…ああ、そうよ。」
それが嘘か本当かはわからなかったが、彼女は悪魔のような軽快さの裏にやはり暗い陰りが見える。
だからそれは本当のことなのだろうと、判断した。