いい子わるい子
□伍
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そしてその被害は放課後まで続く。
テニス部の3年は全国大会も終わり引退だが、今だ顔をだして指導したりすることもある。
後輩達を厳しく鍛える中、外からガシャァンッとフェンスに何かがぶつかる音が聞こえた。
全員がその激しい音にバッと音がした方を見る。
するとコロコロと転がる野球ボールがあった。
校庭の方から飛んできたんだろう。
通常野球部はテニスコートまで飛んで来るような激しいホームランを決めたりなどしない。
一体何が起こったのかと怪しむ中、校庭の方からバットを肩叩きでもするように弄びながらやってくる女。
その様子は彼女の意思に関わらず、風貌と相まってまさに不良がお礼参りにでもくるようで、数人は肩をすくめた。
「飛鷹つばさ!」
その正体に真田が大きく声を張り上げる。
「悪りぃ悪りぃ。」
彼女は特に悪びれる様子なく、軽く手を上げて平謝りをした。
「また貴様の仕業か!一体何をしていたのだ!」
「野球だよ。」
そうあっさりと答えるつばさだったが、彼女の場合一般的な野球をしていたようには見えない。
「こんなめちゃくちゃで力任せな野球があるか!お前は手加減を知らんのか!」
すると彼女は不意に眉の角度を鋭くして、真剣な顔つきになった。
「お前、スポーツマンとして手加減を良しとするのか?全力でやらなきゃ相手に失礼だろうが。」
その言葉は最もで真田にとっては突かれると痛い点なのだが、彼女の場合むしろ手加減したほうが調度いいのでは?疑問が湧いてしまう。
言葉に詰まる真田をよそに彼女はチラリとその後ろに目をやると、何か思いついたようににやりと笑った。