猫のしっぽ

□1 ひるね
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俺は特に女の子達の間での流行りや常識などに敏感な方ではなかった。
例えば、校則違反だけれど多少のお化粧をして、スカートの丈をいわゆるミニスカートのそれにすること。
なるほど、確かに可愛いともてはやされている女の子達の多くはみんなそうしている。

けれど俺はそれを周りが騒ぎ立てるほど、素直に可愛いと思ったことがなかった。
それはそういう振舞に女の子特有の早熟さや小狡さが含まれていることを、年甲斐もなく感じていたからなのだろう。
要は妙に達観してしまっていたのだ。

だからこれまで何度かそういう子達に告白されたことがあったけれど、どうにも彼女達を魅力的だとは思えなかった。
失礼ながら皆同じように見えてしまって、その告白を受け入れたことは一度もない。

俺はずっと女の子とはそういうものなのだと認識していたのだ。


けれど秋晴れの心地よいこの日、彼女は屋上庭園で眠っていた。

ベンチの上でもなく硬い地べたに。

まるで猫のように体を丸め、花弁のような小さな唇からすうすうと寝息を立てていたのだ。
その姿は自然体というよりいっそ野生的で、俺の知る女の子の姿とはかけ離れていた。

どこか見覚えがある。
そう思った途端、同じクラスの子だと気づいた。

鈴森さんだ。
その名前は出てくるものの、彼女とは特に話したこともないし、同じ役職やグループで活動したこともない。
つまりあまりよく知らない子だった。
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