夏のラナンキュラス
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試合が始まり1時間が経っただろうか。
それはかなり拮抗したものとなってきた。
「4-4!」
コールがかかり、同点で迎えた第9ゲーム目。
みんなその成り行きを食い入るように見守っていた。
「あの子まじですごいC〜、跡部と互角にやり合ってるよ〜。」
「いや…これからだぜ。」
キャップの男が真顔でそれを見つめると、眼鏡の男が口元に弧を描く。
「ああ、跡部の得意な持久戦や。奴はもうゲームマッチまで先が見えとるはずやで。」
確かに氷帝の面々にとって、彼女の身体能力は目を見張るものがあった。
けれど、彼らの氷帝のレギュラーとしての自信は揺るがぬものなのだろう。
彼らはコートに立つ男の勝利を常に確信していた。
男は静かに少女を見つめる。
その目は仲間の科白通り彼女を見抜いていた。
「お前の弱点…スケスケなんだよ!」
彼はボールをあげると強烈なサーブを繰り出す。
死角に打ち込まれたそのボールは誰もが取れまいと思ったその瞬間だった。
彼女の周りを膨大なオーラが包み込む。
パァンと軽快な音が響くと、そのボールは彼の後ろへと落ちていた。
「あれは…天衣無縫…」
いつかのように皆それを唖然と目の当たりにする。
「…はっ、全く嫌な奴を思い出させるぜ。」
跡部は点を奪われたにもかかわらず、どこか楽しそうな表情で呟いた。
「俺達これまでに何度か見ましたけど…あれって…」
「ああ、多分桁違いだぜ…。」
くるみの爆発的なオーラが場内を支配して、彼女は心底楽しそうに微笑む。
「やっぱりわたしのカンってあたるんだよね。キミとやるのすごくたのしいや。」
少女はここへきて完全に自身の気を全体に集中させて覚醒した。
その様子に彼は完璧に予定を狂わされてしまったが、全身全霊でそれに食らいつく。
野試合とはいえ、自分の全てを曝け出してプレーする2人に周囲は目が離せなかった。