夏のラナンキュラス
□17 cheer
1ページ/3ページ
***
「この大馬鹿者が!」
氷帝から帰ってくるやいなや、くるみの頭に鉄拳制裁が落ちた。
如何にも痛そうな音を立てて落ちてきたその拳は一切加減がない。
「いたぁあああああ!」
くるみは頭を抱えてその場にうずくまる。
「うわっ…副部長容赦ねぇ。」
「一応女の子だぜ…。」
自業自得とはいえ、そんな彼女に憐れみの目を向ける赤也と丸井。
「天道さん、さすがにこれは反省してもらわないと困るよ。君のやったことは道場破りのようなものだからね。」
加えて幸村にも厳しい視線で窘められ、くるみは涙ぐみながらサッと柳の後ろに隠れる。
「天道、俺はお前を庇う気はないぞ。」
「えっ、わたしいわれたとおりにテイサツしてきたのに!?」
柳にも見捨てられるような口を聞かれ、くるみは驚愕の表情で彼を見上げた。
「お前のしたことは偵察とは言わない。」
「でもじっさいに戦ってきてどんなカンジかとかはわかったよ!?」
「約束もなしに急に押しかけて戦いを挑むなど、相手に失礼でしょう。我々はそう言うことを言っているのです。」
柳生も眼鏡を押し上げて、それを光らせる。
「いいかい、今後2度とこういうことをしないって約束できるね?」
幸村にやや威圧的に尋ねられ、くるみは柳の後ろに隠れたままコクコクと頷いた。
「…ごめんなさい。」
珍しくしおらしく項垂れる少女。
その様子に、みんな顔を見合わせると険しかった表情を和らげた。